魔珠 第12章 最終交渉(9) 魔術師ヌビス8 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「ああ。なるほど。確かに……殺されている」
 青竜は青白い光を帯びていた。
 魔力が、吸収されている。
 もう維持するだけの魔力が残っていないのだろう。結界が消え、辺りが明るくなった。元の船室に戻ったのだ。
 ゆっくりとヌビスは左手を頭上に掲げた。指先から高速で光が放たれ、天井を貫いて真っ直ぐ空に上がった。数秒すると、今まで青く晴れ渡っていたはずの空に急に黒い雲が立ちこめた。
 ヌビスは薄気味悪い笑いを浮かべた。
「これでもう私の魔力は尽きた。お前がその剣を離さない限り、新たに魔力を集めようとしてもすぐに吸収されてしまうのだろう。魔術師としての私は殺された。そして、魔術師ではない私は殺されたも同然だ」
 くくっとヌビスは嘲笑する。
「まさかこのような形で殺されるとは。だがな」
 ヌビスは不敵に微笑む。
「私は魔術の道を究めるために生まれたのだ。魔術の才能に恵まれ、マーラル王太子という魔術を探究するために理想的な地位を生まれながらにして与えられた。王になればマーラルにあるものは何でも意のままに動かせる。金、資源、人。私が魔術を究めるためにマーラル全土が動いてくれる。魔術を究めることこそ私に与えられた使命、そして私の喜び。だから最後に」
 冷たい目でヌビスはスイを睨んだ。その目は狂気に満ち溢れていた。
「私が最強の魔術師であることを証明してみせる」
「いったい……何を」
 手が震え出しそうになるのを、不安が表情に出そうになるのを堪えながら、スイは呟いた。
「魔術兵器を開発しているときに偶然大変興味深い現象を発見してな。特定の条件で魔珠のエネルギーは干渉し合う。魔術兵器を奪われた後もずっと研究を続けていた。使い方によっては、魔術兵器以上に面白いことが可能になるのではないかと思ってね」
 おそらく何も聞かされていないのだろう。スイとキリトだけではなく、魔術師たちの間にも張りつめた空気が流れる。
「三時間後、術が解かれ、世界中の魔珠の粒子たちが干渉し合う。粒子たちは爆発を誘発する。空気中に漂っている粒子程度の密度なら一瞬小さな火花が散る程度の小爆発で住むだろう。だが、魔珠がある場所、さらには魔術兵器がある場所はどうなるかな」
 スイは息を呑んだ。魔珠は日常生活にも不可欠なそのエネルギーを人々に供給するため、どの国でも地域ごとに設置塔を置いて、その場所に鎮座している。リザレスだけでも首都のクラークを始め国内十カ所に設置塔がある。さらに、魔珠担当官であるスイの私邸の部屋には二十数個の魔珠がある。そして何と言っても魔術兵器だ。クラークにあるのか、その近郊にあるのか、あるいは全く別の場所にある可能性もあるが、リザレスのどこかにある魔術兵器が爆発したら。クラークほどの規模の町でも跡形なく吹き飛ぶ可能性がある。

次回更新予定日:2020/12/12

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