魔珠 第13章 光の柱(4) グラファドの商船 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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スイはキリトが乗ってきた商船に戻った。キリトにも内緒で隠れて乗り込んできたのだ。
「おかえり」
 迎えたのはグラファドだ。
「レヴィリン博士の船に向かってくれ」
「キリトは置いていっていいのか?」
「キリトはまだ仕事中だ」
「分かった」
 グラファドは船員たちに船を出すよう指示しに行った。
 グラファドの姿が消えると、急に妙な気配を感じてスイは振り返る。
「メノウ。お前も乗っていたのか」
 驚いた顔で訊ねると、メノウは笑顔を返した。
「そうだよ。ばれないようにスイと逆側の部屋に隠してもらっていたんだ」
 こんな最前線に乗り込んでくるなんて。
「ところで、あれ何?」
 メノウが海域に現れた雲まで伸びる光の柱を指差して問う。
「俺も気になっていたんだ」
 戻ってきたグラファドが二人の横に並んで光の柱を見る。
「今はあまり詳しく話している時間はないのだが」
 どうしてこうなったのかのいきさつは飛ばして、これがヌビスの魔術であり、早く解除しなければアルト海周辺の魔珠が影響を受けることを伝えた。
「ヌビスはこの難問をレヴィリン博士に遺し、決して答えを口にできぬよう自ら命を絶った。マーラル軍も協力を約束してくれたが、博士に伝えないことには事態が動かない」
「お、博士だ」
 グラファドが近づいた船の甲板にレヴィリンの姿を見つけて再び船員たちに指示を出す。
「悪いな、メノウ」
「あとでたっぷり詳しい話聞かせてもらうんだからね。覚悟しておいてよ」
 スイは苦笑しながらグラファドの後を追った。
 船員たちが船を寄せてタラップをかけ始めようとすると、レヴィリンがこちらの方に歩いてきた。
「あの光のことかね?」
「そうです。そのことで博士とカミッロ隊長にお話が」
「助かる。分析を急いでいるのだが、どうも不明な点が多い。実に興味深い現象だ。乗せていってもらおう」
 レヴィリンはすぐにタラップを渡って船に乗り込んできた。
「ありがとうございます。行きましょう」

次回更新予定日:2021/01/16

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