魔珠 第12章 最終交渉(3) 魔術師ヌビス2 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「陛下、リザレスの外務室長がお見えです」
「通せ」
 中からヌビスの声がした。威厳のある声だ。キリトは肩の力を抜いて案内役の兵士が扉を開くのを待った。
「本日は階段に応じていただき誠にありがとうございます」
「まあかけたまえ」
 キリトは大きなテーブルを挟んで置かれた立派な椅子に腰かけながら、部屋の様子をうかがった。広い船室だ。左側の壁には体格の良い兵士が二人と黒いローブの魔術師が三人いた。案内役をしてくれた兵士はすぐに退室してしまったので、もう持ち場に戻っているのだろう。
「この状況でわざわざ我が陣営に出向いてくれるとは。何か良い知らせでも持ってきてくれたのかね?」
 やはり要求を拒めば、武力行使の前に斬った使者の首を投げつけて開戦宣言かな、などと考えながらも落ち着いた穏やかな表情を崩さずにキリトは答えた。
「まずリザレスはマーラルの要求には応じられません。そしてもう一つお伝えしておくことがあります」
「ほう」
 対するヌビスは面白くなさそうな顔である。
 入ってくるなり嫌な男だと思った。この男の持つ魔力がどうにも気に入らない。今まで生きてきて多くの人と会ったが、こんな感覚は初めてだ。それに。
 ふざけている。
 マーラル王ヌビスの前でなぜそんな余裕のある表情をしている。仮にも優秀なリザレスの外務室、しかも室長であれば、ある程度はマーラル王の人となりを把握しているはず。無事帰れるとでも思っているのか。
 気に入らない。前にも自分を前にしてこのように平静に振る舞っていたリザレス人がいたと急に思い出した。
 キリトは大胆にも口元を吊り上げて悪い顔をした。
「リザレスは魔術兵器を保有しています。マーラルの脅威がなくなるまでという条件で里にも認めてもらっています。必要とあらば使用も辞しません」
 ヌビスはくくっと笑った。
「里の許可まで取りつけたか。なるほど面白い」
 まさかそれでマーラルが退くなどと考えているのではあるまいな。
「だが、残念ながらリザレス王は一般に良識と言われているものを覆せない人間。リザレス王には使用できない。だがな」
 ヌビスは蛇のような目でキリトをにらんだ。

次回更新予定日:2020/10/31

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