魔珠 第12章 最終交渉(2) 魔術師ヌビス1 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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二週間後、マーラルから使者が訪れた。要求はリザレスからマーラルへの魔珠の安定供給。この要求が受け入れられない場合、武力行使も厭わないと使者は伝えた。無論里以外の国家間での魔珠の輸出入は里との契約違反となる。要求を呑むことはできない。事実上の宣戦布告だ。
「話し合いの場をもちたい。そうマーラル王に伝えて欲しい」
 リザレス王エトはマーラルの使者に言った。

 話し合いの日時と場所が設定される。実はもうこのときマーラルは進軍を開始していたため、場所は船乗りたちが「安息の地」と呼んでいるアルト海のアインとクラークの中間海域付近となっていた。
「この状態で交渉に行くとかマーラル王に首斬られに行くようなもんだよなあ」
 外務室で資料を探していると、交渉役を任されたキリトがぼやきだした。
「首斬られたらお前化けて出てきそうだな」
「やめてくださいよ。交渉役にされたこと恨んで呪うとか」
 試料をめくりながら返すスイの言葉に外務官たちが青ざめる。
「おうおう、そうすればお前らも少しは士気上がるだろう」
「いえ、実際に戦うのは我々ではありませんから」
 普通に部下たちが返答する。すると、それを聞いていたスイが涼しい顔で言った。
「どうせ化けて出るなら、敵陣にしろ。剣を振り回せば、敵軍も半壊程度にはできるんじゃないか」
「そりゃ名案だ。だが、最初に斬られるのは、生前散々な言われ用をしていちばん俺の恨みを買っているお前だ」
「残念だが、お前の腕では私は斬れん」
 正論を吐かれて一瞬怯んだが、この野郎、バカにしてんのか、といつものようなやりとりになって、部下たちは苦笑しながらデスクワークに戻る。

 その日がやってきた。
 波は静かで海域にはリザレス軍とマーラル軍の船がにらみ合うように展開されていた。
「準備は万端だ。頼んだよ」
 忙しい最中、カミッロが見送りに来てくれた。
「言うことは言ってきます。私の首が返ってきたら後はお願いします」
 キリトはいつもの軽い口調で言うと、軍船より一回り小さい商船に乗ってマーラル軍の船の群れに突っ込んでいった。
「リザレス外務室長キリト・クラウスです」
「お待ちしておりました。こちらへ」
 マーラルの兵士たちは口数が少ない。余計なことを言わないようにしているようにも見える。
 案内された部屋の前には兵士が二人並んで立っている。この部屋の警備担当の兵士だろう。

次回更新予定日:2020/10/24

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