魔珠 第12章 最終交渉(1) 外務室 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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一ヶ月経たないうちに里からマーラルに魔珠の輸出を凍結すると通告が下った。
 カミッロはアルト海に監視船を出して情報収集を始めた。国内の商船や貨物船にも協力を呼びかけた。他の国も監視船で巡回をしていて、動きがなかったか情報交換することもあった。
 王都クラークの港にはいつでも出撃できるように軍船が用意されていた。海で迎え撃つと決めた以上、遅れを取るわけにはいかない。
 その三日後、マーラルの王都ラージュに潜入していた密偵から外務室に連絡があった。
「マーラルが動き出したらしいぞ。どう出るかな」
 外務室で活発な議論が行われた。スイもできる限り議論を聞かせてもらうことにした。
 外務室で話し合われるのは、まず戦争を回避するためにどのようなカードを用意して交渉に臨めるかである。以前、スイがキリトたちと話していたようにマーラル王ヌビスと交渉して戦争を回避するのは難しそうである。だが、有効であるかどうかに関わらず、並べて議題に取り上げるべきカードは揃えておくべきである。それを確認する作業が入念に行われた。
「ところで、例の件は進んでいるのか?」
「後継者探しですよね。それが何件か有力そうなところが見つかって当たってみてはいるのですが」
 ヌビスの失脚に成功したときのための手を打っておきたい。空白期間ができると、また事態が混乱する。
「血縁者という筋では難しいのかね」
 キリトが呟く。
 ヌビスには何人もの子どもがいるはずなのだが、噂されているように自ら父王に手をかけたためだろうか、血のつながった者たちを信用せず、些細なことで自分の地位を狙っているのではないかと考え、母親やその親族と共に追放や処刑にしてきた。魔術の実験に利用されて命を落としたり精神が崩壊してしまった者も少なくない。そのため、王都ラージュに残っているのは、ほんのわずかで、最年長の者でも五歳であるという。
「十年以上前に身の危険を感じた母親に連れられて逃亡に成功した子どもがいるという情報も入って追跡を試みたのですが、やはりうまく行方をくらませていて足取りが我々の方でもつかめなくて」
「そりゃそうだよな。ヌビスの手から逃げて十数年も生きているんだとしたら」
 そっか、そうだよな、とキリトはため息をつく。
「動きにくくなっているだろうが、無理のない範囲で捜索は引き続き頼む」
「分かりました」
 担当の外務官が答えた。

次回更新予定日:2020/10/17

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