魔珠 第11章 迎撃準備(8) 恩師の私邸3 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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速い。
 二人の動く速さはやはり異次元だ。あんなに大きな動きをしてもすぐに有利な体勢に持っていって反撃の構えが取れる。
 スイの攻撃を跳んで交わしてそのまま上から斜めに猛烈な素速さで斬りつけてくる。勢いのあるいい攻撃だ。スイは先に剣の軌道を一瞬で読み取って両手で大きく弾いた。予想よりもかなり後ろの地点への着地となったが、目の前に襲いかかってきたスイの一振りには何とか対応する。しかし、次の一撃は防ぎようがなかった。
「やはり強いな」
「先生も以前手合わせしたときよりも強い印象です」
 さすがに二人とも呼吸が乱れていた。互いにこんな強い相手と手合わせする機会はそうそうない。手は一切抜いていなかった。少なくともキリトにはそう見えた。
 そのあと、交替しながら二、三戦交えた。
「少し休憩しようか」
 気持ちのいい風が吹いてきた。中庭の隅の木陰にテーブルと椅子があった。飲み物も用意されていた。席に着くと、お茶を勧められるまま一口飲んだ。
「それで先生。何のお話をすればいいですか?」
 カミッロはにやりと笑った。
「お互い難しい立場になったからな。個人的に自宅に招待するには理由が必要だろ。久しぶりに手合わせしてみたくなったというのは嘘ではないが」
 そう言って少し身を乗り出す。
「取りあえずまずこちらの話を聞いてもらおうかな」
「喜んで」
 キリトが大げさにどっしりと構える。かつての恩師を前に大した態度だ。カミッロは頼もしい限りの教え子に微笑むと、話を切り出した。
「陛下から兵器のことを明かされてね。まあ隣国が兵器の開発に成功しそうだったわけだから対抗手段として持てるものなら持っておくというのは戦略的には妥当だ」
 かなり強引なやり方ではあるが、とスイは心の中でつぶやいた。〈器〉にされた魔術師たちが経験した苦痛については、リザレス王エトもカミッロも真実を聞かされていないのだろう。一人の魔術師が〈器〉になることによっていくつの魔結晶が生成され、その魔術師が魔力と体力を削られ、回復のために一定の休養期間が必要だという客観的な数字の羅列による報告は無論国王として聞いている。だが、開発の継続のために都合の悪くなりうる報告をレヴィリンがわざわざするはずもなく、実際研究所の魔術師たちはそのことについて一切語ろうとしなかった。研究所内部で情報統制が敷かれていると考えるのが自然だ。
「遅かれ早かれ里はマーラルへの魔珠の輸出を中止するだろう。マーラルは魔珠を求めて他国に侵攻する。陛下は魔術兵器を保有していることを公表してマーラルがリザレス以外の国に矛先を向けさせるようにしようとお考えだ」

次回更新予定日:2020/09/12

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