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信じられなかった。
「いつもあんなに堂々とした態度で仕事しているのに」
「そう見えているのなら、それはお前のおかげだ。お前が信頼できる部下として私を支えてくれているから。そして、心置きなく話ができる友人として苦しいときにも話し相手になってくれるから」
グレンは驚いた表情のまま、エストルを見つめていた。
「生まれたときから宰相になるべく育てられてきた。だから、人前ではいつでも気丈に振る舞うことができる。でも、残念ながら私はそんなに強い人間にはなれなかった」
手で顔を覆うエストルの声はかすれていた。
「グレン、私のためでもあると思って、もっと自分のこと、大切にしてくれないか?」
「エストル……」
「勝手だよな。結局私は自分のことしか考えていないんだ」
「そんなことないよ」
グレンはエストルの手をしっかりつかんだ。
「エストルみたいな立派な友達に頼りにされて、すごく嬉しい」
「また、お前に救われた」
エストルの口元がほころんだ。
「ないがしろにしているわけじゃないんだ。でも、大事にするよ。自分の命も。今まで以上にね」
グレンは席を立って、ドア口に向かった。
「ありがとう、エストル」
ドアが閉まり、グレンが去っていったのを確認すると、エストルは口を開いた。
「そこにいるんだろう、クレッチ」
ふわりと空間が揺らぎ、クレッチが現れる。
「やはり連れて行ってくれないんですね。グレン将軍は」
「まあ仕方がない。何とかしてもらえるだろう。それより何か情報が入ったか?」
「はい。またヴァンパイア化した村の情報が」
「この情報は口外しないでおこう。あまり件数が増えると怪しまれる。あちらにだけ伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
クレッチが消えると、エストルは大きく溜息をついて、椅子にもたれかかった。
「グレン、お前がいてくれなければ、こんな危険なこと、私にはとてもできなかった」
そして、すっと立ち上がり、ノートと地図を持って執務室に戻った。
次回更新予定日:2015/11/28
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「いつもあんなに堂々とした態度で仕事しているのに」
「そう見えているのなら、それはお前のおかげだ。お前が信頼できる部下として私を支えてくれているから。そして、心置きなく話ができる友人として苦しいときにも話し相手になってくれるから」
グレンは驚いた表情のまま、エストルを見つめていた。
「生まれたときから宰相になるべく育てられてきた。だから、人前ではいつでも気丈に振る舞うことができる。でも、残念ながら私はそんなに強い人間にはなれなかった」
手で顔を覆うエストルの声はかすれていた。
「グレン、私のためでもあると思って、もっと自分のこと、大切にしてくれないか?」
「エストル……」
「勝手だよな。結局私は自分のことしか考えていないんだ」
「そんなことないよ」
グレンはエストルの手をしっかりつかんだ。
「エストルみたいな立派な友達に頼りにされて、すごく嬉しい」
「また、お前に救われた」
エストルの口元がほころんだ。
「ないがしろにしているわけじゃないんだ。でも、大事にするよ。自分の命も。今まで以上にね」
グレンは席を立って、ドア口に向かった。
「ありがとう、エストル」
ドアが閉まり、グレンが去っていったのを確認すると、エストルは口を開いた。
「そこにいるんだろう、クレッチ」
ふわりと空間が揺らぎ、クレッチが現れる。
「やはり連れて行ってくれないんですね。グレン将軍は」
「まあ仕方がない。何とかしてもらえるだろう。それより何か情報が入ったか?」
「はい。またヴァンパイア化した村の情報が」
「この情報は口外しないでおこう。あまり件数が増えると怪しまれる。あちらにだけ伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
クレッチが消えると、エストルは大きく溜息をついて、椅子にもたれかかった。
「グレン、お前がいてくれなければ、こんな危険なこと、私にはとてもできなかった」
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