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エストルはグレンの緑色の瞳を真っ直ぐ捕らえた。
「お前はお前だけがなし得る方法で力を手に入れた。他の誰かがお前と同じように力を得るためにヴァンパイアに噛まれてもまずは意識を保つことさえかなわない。お前の培ってきた強靱な精神力や魔力があってこそなし得たことだ。それに」
エストルは皮肉っぽい笑いを浮かべて言った。
「力自体には善も悪もない。人間の力であろうとヴァンパイアの力であろうと使い方次第で善にもなれば悪にもなる。結局は力をどう使うかだ」
すっとエストルがグレンの手を取る。
「グレン、お前なら信用できる。お前にならどのような力であろうと託すことができる」
「うん。ありがとう、エストル。もう少し、この力を使わせてもらうことにする。だから、エストル。もうしばらくよろしくね」
エストルは微笑んだ。グレンの力になれることがただただ嬉しかった。
翌日、会議が行われた。
会議では、二人になった王騎士の任務の分担が決められた。ソフィアは魔獣とゾンビの対応、グレンはヴァンパイアの浄化に専念することになった。
「情報はこれまでどおり収集する」
基本的にやり方は今までとは変わらない。ヴァンパイアを斬りつける剣にヴィリジアンの力が加わっただけだ。それだけだが、それだけで人を救うことができるようになる。今まで討伐するしかなかったヴァンパイアを人に戻すことができる。
「時間はかかると思うが、地道にやっていこう」
グレンはエストルにうなずいた。
テルウィングの今後のことも議題に挙がった。ウィンターは昨晩話したようにテルウィングに行って仲間と合流し、情報交換をした後、テルウィング王に会うつもりだと会議の参加者たちに伝えた。それに加えて、テルウィングのヴァンパイアの浄化のために、ヴィリジアンの使い手であるシャロンの同行の許可を願い出た。ウィンターの提案は会議で承認され、二人は三日後に出発することとなった。
ウィンターとシャロンの出発の日が来た。上級ヴァンパイアの討伐作戦に参加した面々が見送りに来ていた。
「しばらく顔が見られないと思うと寂しいものだな」
クレサックがしみじみと言うと、シャロンが笑う。
「もう。何ヶ月かで報告に戻ってくるって」
「だが、確かに一人でリネルの小屋で暮らすというのは今までなかったことだから、寂しいかもしれないな」
ウィンターが少し同情した。誰かが出かけてしまうことも多かったとはいえ、三人で賑やかに暮らしていたクレサックにはきっと物足りないことだろう。
次回更新予定日:2018/07/14
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「お前はお前だけがなし得る方法で力を手に入れた。他の誰かがお前と同じように力を得るためにヴァンパイアに噛まれてもまずは意識を保つことさえかなわない。お前の培ってきた強靱な精神力や魔力があってこそなし得たことだ。それに」
エストルは皮肉っぽい笑いを浮かべて言った。
「力自体には善も悪もない。人間の力であろうとヴァンパイアの力であろうと使い方次第で善にもなれば悪にもなる。結局は力をどう使うかだ」
すっとエストルがグレンの手を取る。
「グレン、お前なら信用できる。お前にならどのような力であろうと託すことができる」
「うん。ありがとう、エストル。もう少し、この力を使わせてもらうことにする。だから、エストル。もうしばらくよろしくね」
エストルは微笑んだ。グレンの力になれることがただただ嬉しかった。
翌日、会議が行われた。
会議では、二人になった王騎士の任務の分担が決められた。ソフィアは魔獣とゾンビの対応、グレンはヴァンパイアの浄化に専念することになった。
「情報はこれまでどおり収集する」
基本的にやり方は今までとは変わらない。ヴァンパイアを斬りつける剣にヴィリジアンの力が加わっただけだ。それだけだが、それだけで人を救うことができるようになる。今まで討伐するしかなかったヴァンパイアを人に戻すことができる。
「時間はかかると思うが、地道にやっていこう」
グレンはエストルにうなずいた。
テルウィングの今後のことも議題に挙がった。ウィンターは昨晩話したようにテルウィングに行って仲間と合流し、情報交換をした後、テルウィング王に会うつもりだと会議の参加者たちに伝えた。それに加えて、テルウィングのヴァンパイアの浄化のために、ヴィリジアンの使い手であるシャロンの同行の許可を願い出た。ウィンターの提案は会議で承認され、二人は三日後に出発することとなった。
ウィンターとシャロンの出発の日が来た。上級ヴァンパイアの討伐作戦に参加した面々が見送りに来ていた。
「しばらく顔が見られないと思うと寂しいものだな」
クレサックがしみじみと言うと、シャロンが笑う。
「もう。何ヶ月かで報告に戻ってくるって」
「だが、確かに一人でリネルの小屋で暮らすというのは今までなかったことだから、寂しいかもしれないな」
ウィンターが少し同情した。誰かが出かけてしまうことも多かったとはいえ、三人で賑やかに暮らしていたクレサックにはきっと物足りないことだろう。
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