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メノウはいつものケースを取り出すと、ロックを解除して開いた。ケースも特殊な合金でできているようだが、研究所などに分析をさせても不明の成分が出てくる。やはり魔珠の里でしか採れない金属が使われているのだろう。
中には美しく輝く透き通った球がつめられている。一粒の大きさはビー玉程度だ。この小さな球体に膨大なエネルギーが眠っているのである。スイは慣れた要領で魔珠を数えた。
「確かに」
「次の注文票も用意してある?」
「ああ、これだ」
注文票を受け取り、さっさと目を通すとメノウは微笑んだ。いつもとあまり変わらない数量だ。
「分かった。また持ってくるよ。決済はいつもどおり港の銀行でできるんだよね?」
「ああ。いつもどおりな。ところで」
スイは切り出した。
「マーラルの魔珠の輸入量が最近かなり増えているとの噂を聞くのだが」
すると、メノウがくすっと笑った。
「スイは何でも知っているんだね。そう。僕たちもちょっとマークしている」
「メノウ」
スイは席を離れて窓辺に歩いていった。レースのカーテン越しからちらっと中庭を見て、くるりとメノウの方に振り返った。
「マーラル王にあったことはあるか?」
「見たことはある」
メノウは腰かけたまま不思議そうにスイを見上げた。しかし、スイはすぐにメノウから目をそらし、窓の方に向き直った。
「マーラル王は何をするか分からないお方だ。気をつけた方がいい」
その目は遠い空を見ていた。
重要な任務から解放されると、二人は部屋を出た。雑談をしながら廊下を歩いていると、シェリスと会った。
「スイ様、何かお飲み物をお持ちしましょうか」
念のため訊いてみる。
シェリスはセイラムの頃からこの屋敷に仕える執事で、セイラムが郊外に移るときには引き続き仕えたいと願い出たが、セイラムの方からスイの面倒を見て欲しいと頼まれ、快く引き受けた。シェリスはスイよりもよく家のことが分かっており、セイラムの仕事も多少手伝っていたため、まだ若いスイにはなくてはならない相談相手でもあった。教えてもらうこともまだまだ多い。
「ありがとう。また後でお願いするよ」
次回更新予定日:2018/08/25
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中には美しく輝く透き通った球がつめられている。一粒の大きさはビー玉程度だ。この小さな球体に膨大なエネルギーが眠っているのである。スイは慣れた要領で魔珠を数えた。
「確かに」
「次の注文票も用意してある?」
「ああ、これだ」
注文票を受け取り、さっさと目を通すとメノウは微笑んだ。いつもとあまり変わらない数量だ。
「分かった。また持ってくるよ。決済はいつもどおり港の銀行でできるんだよね?」
「ああ。いつもどおりな。ところで」
スイは切り出した。
「マーラルの魔珠の輸入量が最近かなり増えているとの噂を聞くのだが」
すると、メノウがくすっと笑った。
「スイは何でも知っているんだね。そう。僕たちもちょっとマークしている」
「メノウ」
スイは席を離れて窓辺に歩いていった。レースのカーテン越しからちらっと中庭を見て、くるりとメノウの方に振り返った。
「マーラル王にあったことはあるか?」
「見たことはある」
メノウは腰かけたまま不思議そうにスイを見上げた。しかし、スイはすぐにメノウから目をそらし、窓の方に向き直った。
「マーラル王は何をするか分からないお方だ。気をつけた方がいい」
その目は遠い空を見ていた。
重要な任務から解放されると、二人は部屋を出た。雑談をしながら廊下を歩いていると、シェリスと会った。
「スイ様、何かお飲み物をお持ちしましょうか」
念のため訊いてみる。
シェリスはセイラムの頃からこの屋敷に仕える執事で、セイラムが郊外に移るときには引き続き仕えたいと願い出たが、セイラムの方からスイの面倒を見て欲しいと頼まれ、快く引き受けた。シェリスはスイよりもよく家のことが分かっており、セイラムの仕事も多少手伝っていたため、まだ若いスイにはなくてはならない相談相手でもあった。教えてもらうこともまだまだ多い。
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