魔珠 最終章 ゲート(2) 三人で 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「ご一緒させてもらっても構わないかな?」
「いいよね?」
 グレンは振り返ってソフィアに聞く。
「もちろんよ」
「では、失礼させてもらうよ」
 グレンはウィンターに空いていた椅子を勧めた。その足でグラスを一つ取ってきてウィンターの前に置くと、そこにも酒を注いだ。
「ありがとう」
 ウィンターに微笑んで、グレンは自分の席に着こうとした。
「ソフィア?」
 涙ぐんでいる。グレンは一瞬驚いたが、すぐにその理由に思い至った。
「ごめんなさい。なんか急に思い出しちゃって」
「そうだね」
 グレンは優しくうなずいて席に着いた。
「城に揃うと、ソードと三人でよくこうして飲んだね」
「そう。ソードあまり話はしなかったけど、お酒は好きだった」
 口元には穏やかな笑みを浮かべていたが、涙が止まらなかった。
「そうか」
 ソフィアの涙を見てウィンターは寂しそうに笑った。
「私は、ソードのこと、何も知らないんだな」
「ごめんなさい。悲しいの、私だけじゃないのに。でも、大切な仲間だったの」
「ソードは王騎士として君たちと過ごせて、幸せだったと思う。きっと君たちといるときが唯一心安まる時間だったのだと思う。良かったら、もっと聞かせてくれないか? ここに来てからのソードのこと」
 ウィンターはグレンとソフィアが語る思い出の一語一語に耳を傾けた。
「遅くなっちゃったわね。私はそろそろ失礼するわ」
 どれほどの時間が経っただろうか。話が尽きると、ソフィアが席を立った。
「おやすみなさい」
 グレンがソフィアを送ってドアを開けると、そこには少し驚いたような表情のエストルが立っていた。急に目の前でドアが開くとは思っていなかったのだろう。
「エストル様」
 ソフィアも一瞬驚いたようだったが、すぐににっこり笑って挨拶を交わし、部屋を出ていった。
「ウィンターも来ていたのだな。ちょうどいい」
 エストルは慣れた動作で空いている席に座った。グレンが慌ててソフィアのグラスを下げ、代わりにエストルの前に新しいグラスを置いて酒を注ぐ。

次回更新予定日:2018/06/23

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