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夜になると、エルリックが迎えに来た。
ヌビスに研修生が呼び出されたのは、これが初めてではない。これまでも何回もあったのだとエルリックは言った。
「将来マーラルにとって脅威となりうる優秀そうな研修生を見極めて呼び出すのです」
「それで、どうするのですか?」
スイの問いに対してエルリックは目を伏せて唇をきゅっと結んだ。そして、吐き捨てるように答えた。
「ご自身の呪術の実験に使うのです」
「呪術?」
反射的に返したものの、意外に驚きはなかった。ヌビスが大魔術師で、魔術や呪術の研究にのめり込んでいることは知っている。
「苦痛を伴う呪術です。どのような呪術なのかは私には詳しくは分かりませんが、呪術を受けた者は以後、恐怖のあまりマーラルに関わることはなくなると言われています」
それほど激しい苦痛と恐怖を与える呪術だということか。漠然と考えていると、エルリックがスイの胸に顔を埋め、ぎゅっと体を強く引き寄せた。
「すみません。嫌ですよね。そんなの嫌に決まっています……」
腕をつかんで顔を上げたエルリックの頬は涙で濡れていた。
「もう私も嫌なんです。こうやって何の罪もない教え子たちを苦しませるのは」
この人は何人も研修生たちが苦しんでいるのを見てきているのか。スイは心を痛めた。
エルリックは涙を拭いて立ち上がった。
「断ってきます」
「待ってください」
慌ててスイが止める。
「先生にも……ご家族がおられるのでしょう?」
スイの言葉にエルリックははっとなって動けなくなる。
「断れば……陛下に逆らえば、先生とご家族はどうなるのですか?」
セイラムからもヘキからも聞いた。ヌビスに逆らって一族全員が収容所に送られて過酷な労働を強いられたり、処刑されたりした人の話は何度も聞いた。だからこそ問うことができた。エルリックもそれを鋭く見抜いた。
「なぜそんなことを知っているのです?」
次回更新予定日:2019/04/13
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ヌビスに研修生が呼び出されたのは、これが初めてではない。これまでも何回もあったのだとエルリックは言った。
「将来マーラルにとって脅威となりうる優秀そうな研修生を見極めて呼び出すのです」
「それで、どうするのですか?」
スイの問いに対してエルリックは目を伏せて唇をきゅっと結んだ。そして、吐き捨てるように答えた。
「ご自身の呪術の実験に使うのです」
「呪術?」
反射的に返したものの、意外に驚きはなかった。ヌビスが大魔術師で、魔術や呪術の研究にのめり込んでいることは知っている。
「苦痛を伴う呪術です。どのような呪術なのかは私には詳しくは分かりませんが、呪術を受けた者は以後、恐怖のあまりマーラルに関わることはなくなると言われています」
それほど激しい苦痛と恐怖を与える呪術だということか。漠然と考えていると、エルリックがスイの胸に顔を埋め、ぎゅっと体を強く引き寄せた。
「すみません。嫌ですよね。そんなの嫌に決まっています……」
腕をつかんで顔を上げたエルリックの頬は涙で濡れていた。
「もう私も嫌なんです。こうやって何の罪もない教え子たちを苦しませるのは」
この人は何人も研修生たちが苦しんでいるのを見てきているのか。スイは心を痛めた。
エルリックは涙を拭いて立ち上がった。
「断ってきます」
「待ってください」
慌ててスイが止める。
「先生にも……ご家族がおられるのでしょう?」
スイの言葉にエルリックははっとなって動けなくなる。
「断れば……陛下に逆らえば、先生とご家族はどうなるのですか?」
セイラムからもヘキからも聞いた。ヌビスに逆らって一族全員が収容所に送られて過酷な労働を強いられたり、処刑されたりした人の話は何度も聞いた。だからこそ問うことができた。エルリックもそれを鋭く見抜いた。
「なぜそんなことを知っているのです?」
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