魔珠 第4章 マーラル魔術研究所(10) 王の実験室1 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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周知の事実であっても口外してはいけないこと。それをなぜこの少年は知っているのか。エルリックの目が険しくなる。
「リザレスはそんな情報までつかんでいるのですね。陛下にとってさぞかし恐ろしい国でしょう。あなたを封じようという陛下のご判断は賢明かもしれません」
 それを聞いてスイは曖昧な笑いを浮かべた。
「それがマーラルのやり方なら仕方がありません。情報を手に入れられなかった私の落ち度です」
 もっともそんなに恐ろしい呪術なら、他言する者がいるとは思えないが。
「先生を巻き込むわけにはいきません」
 父の跡を継いでメノウと仕事をすると決めた。メノウの力になると決めた。魔珠担当官になるなら、必然的に周辺各国と関わることは避けられない。マーラルも当然例外とはなりえない。ヌビスの力にひれ伏し、その道をあきらめるようなら、所詮その程度の人間だったということだ。魔珠担当官になってもメノウに迷惑をかけるだけだ。
 後悔しても始まらない。こうなってしまった以上は最悪の状況を回避すべく最善の努力をするのみだ。
「優しいのですね、あなたは」
 エルリックも温かい眼差しに戻る。その瞳には先ほどの涙がまだうっすらと残っている。
「案内してください」
 凛とした顔つきでスイが顔を上げると、エルリックもうなずいた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
 エルリックも本当につらいのだと思う。苦しいのだと思う。それでもヌビスに処罰されるよりはましだ。

 長い廊下をだいぶ歩いた。何回か曲がった。研修生全員で城を案内してもらったときには通らなかった場所だ。あまりきょろきょろして不審に思われるのはまずかったが、せっかくのチャンスだ。入手できる情報は何でも吸収したい。そう思ってスイは歩きながら途中どのような部屋があるのか、城がどのような構造になっているのか、どのような位置関係で何が並んでいるのか、さりげなく確認して記憶した。魔珠担当官になったとき、どこかで役に立つかもしれない。スイは貪欲に何でも吸収しようとした。
「エルリックです」
 扉の前で立ち止まってエルリックは名乗った。すると、扉が開いた。
「ご苦労様。あとはこちらで案内します。また迎えに来てください」
「分かりました」
 黒いローブの男がスイの背中に手を添え、部屋の中に入るように促した。部屋の内部を確認しようとすると、先に背中を強く押され、部屋に入れられた。背後でエルリックが素速く礼をした。扉が閉まった。

次回更新予定日:2019/04/20

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