魔珠 第4章 マーラル魔術研究所(7) 第九実験準備室2 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「ありがたくないな」
 もうヌビスの実験台にされるのはごめんだ。あのときのような恐怖と苦痛はもう二度と受けたくない。それにメノウに絶対に受けさせたくない。
「どれくらいの時間眠っていた?」
 いつもの冷静なスイに戻ってメノウに訊く。メノウは少し考えて答えた。
「一時間ちょっとだと思う。巡回している人がいるみたいで、十分くらいおきでこの部屋の前を通るんだ。六、七回通った」
 ここに侵入した時間から現在の時間を概算する。
「せっかくここまで来たのだから兵器を拝まないで帰るわけにもいかないかな」
 急に不敵な笑みを浮かべたスイを見てメノウは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに思い直して同じ悪い顔になる。
「僕はこのフロアが圧倒的に怪しいと思うね」
 隠された地下二階。秘密裏に兵器の開発を行うには絶好のロケーションだ。
「向かいに結構広そうな実験室があったんだ。来るときに見た」
「決まりだな」
 何が何でも証拠を手に入れて帰る。
「だが、まだ時間があるな」
「時間?」
 不思議そうな顔をしてメノウは聞き返した。スイはゆっくりと壁にもたれかかった。
「お前も楽にしろよ。少し話でもしよう」
「話?」
 よく分からなかったが、メノウは言われたとおりにした。何か考えがあるのだろう。今はスイに従う。何を話そうか少し考える。
「そうだ。どうして僕を助けに来たの?」
 手紙を見たからといってこんなに急いでここに来る必要なない。今、ここにいるということは手紙を見てほぼすぐに来たということだ。
「お前の送ってきた見取り図に誤りがあったからだ」
 メノウは少し考えて口を開いた。
「そっか。君、マーラルに研修に来たときに……でも、僕も何回か城に入ったけど、僕の見た場所には間違いはなかったよ」
「誤りがあったのは、王の寝室の周辺と東側の階段だ。外部の者は中央階段とその周りにある公的なスペースにしか用がないから立ち入らない」
「なんで王の寝室の場所なんて分かるの? 今まで誰も突き止められずにいた場所なのに」
 ヌビスは猜疑心が強く、暗殺や襲撃を恐れ、異常なまでに自身の周辺の警備に気を遣う人物だ。また、反逆者として捕らえられた者を使って魔術の実験などをしているという情報もあり、寝室の場所は各国の密偵が探っても見つけられないほど厳重に管理されている場所だ。

次回更新予定日:2019/03/30

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