「リザレスで魔珠を利用して開発した大量破壊兵器だよ」
やはり開発されていたのだ。嘘であってほしい。そう願っていた。嘘であったら、誰も傷つかずに、傷つけないで済んだのに。
「どうした? あまりにも美しくて言葉が出なくなったかね」
美しい。目の前の球体は悲しいほど美しい。マーラルで見た球よりも明るく力強い光を放っている。球の中にはきらきら光る砂のような粒子が漂っている。マーラルの兵器よりも強い魔力を感じる。
覚悟はしていたはずだ。向こうもこちらの反応を見ている。しっかり訊くべきことを訊かなければ。
「博士、なぜ私にこれを?」
「無論、君がリザレスの魔珠担当官だからだ。輸入した魔珠が国内でどのように利用されているか、それを調査するのも君の仕事だろう」
レヴィリンは平然と言い放った。スイはため息をつく。
「博士、魔珠を使って大量破壊兵器を作ることは契約違反です。契約違反があった場合、その対応をするのも魔珠担当官の仕事です」
「スイ君」
レヴィリンはスイの苦手な蛇のような目つきをして顔を近づけてきた。
「魔珠担当官はどの組織にも属さない独立した役職ではあるが、国王の配下であり、リザレスという国の役人に過ぎない」
「つまり、兵器の開発は研究所が独断で行ったものではなく、陛下のご意志でもあったと?」
そんなことはハウルから聞いてとっくに知っていたが、手紙のことはなかったことにして話を合わせておく。
「マーラルが兵器を開発しているのであれば、我々も対抗手段を用意しなければならない。マーラルはフローラと異なり、強固な独裁国家だ。フローラのときのように里がうまく対抗勢力や民衆の協力を得て兵器を破棄させることができるとは思えない。それに里はまずマーラルへの魔珠の輸出を止めるだろう。それなれば、どうなる? 強力な兵器があるのだから、それをカードに使って周辺諸国を占領せずとも魔珠を横取りするのが手っ取り早いのではないかね。であれば、それ以上の性能の兵器を開発するしかない。それが、陛下のお考えだ」
筋は通っている。だが、兵器を持つことによってリザレスもまた、里の標的になる。
「リザレスも周辺諸国から魔珠を強奪するのですか?」
「まさか」
レヴィリンはスイの問いを鼻で笑った。
「何の算段もなくこのような思い切ったことはしないよ」
「では、輸出を打ち切られたら、どのように魔珠を確保するのです? そもそも現在の魔珠の輸入量でこのような兵器を製造することは不可能だったはずです。どうやって兵器に必要なエネルギーを確保したのですか?」
引き出してやる。ここまで来たらできる限りの情報を引き出してやる。
「そうだね。従来の技術では君の言うとおり不可能だった。魔珠の輸入量を増やせばマーラルのように嗅ぎつけられてしまうしね」
次回更新予定日:2019/12/07
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