魔珠 第9章 駆け引き(7) カードを切る時1 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
Admin / Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

二週間後。思っていたよりも早くその時は来た。
「メノウ様がお見えになっています」
 帰宅すると、シェリスにそう告げられた。スイはいつもどおり玄関の横の小さな応接室に入った。
「連絡してくれれば港まで迎えに行ったのに」
「あまり用意周到にされたら困るからね。不意討ちだよ」
 やはりメノウはやる気だ。情報の伝え方次第では大変な事態になってしまうかもしれない。動揺を見せないように余裕の表情で微笑んで返しながら気を引き締める。交渉を少しでも有利に持っていくための手段だと分かっていても、メノウを偽りの表情で誘導していくのは気分のいいものではない。
 なぜこんな事態になってしまったのか。
 研究所の動きに気づけなかったことが悔やまれる。
「私の部屋で話す? それとも取引の部屋?」
「取引の部屋で」
 即答だった。スイは心の中でため息をつきながらメノウを案内した。
「どうぞ」
 扉を開けて中に入ると、スイはいつもどおり訊ねた。
「お茶でいいか?」
「うん」
 茶の用意をしながら、スイはいつもどおり雑談を始めた。
「里には帰ったのか?」
「帰ったよ。偉い人たちと会っていろいろ話すことあったし」
 つまりメノウは里の幹部からリザレスへの対応の指示を受けているということだ。スイは話題をそらした。
「ヘキ様には会ったか?」
「うん。会った」
「元気にしておられる?」
「うん。元気そうだった」
 メノウもいつもどおり振る舞っているつもりらしかったが、返答が短くそっけない。余計なことを言わないように注意しているように見える。
 トレイにポットとカップを載せてそのままテーブルに置く。ポットから茶を注いでカップを並べると、スイも席についた。
「じゃあ仕入れた情報を聞かせてもらおうかな」
 スイはメノウと会った翌日、研究所の書庫にレヴィリンの論文を調べに行ったことを話した。書庫でレヴィリンに声をかけられ、研究室に招かれたことまで茶を飲みながら話した。メノウもいつもなら話を始める前から一口飲み出すのに、今日は一切手をつけない。警戒されているのだろうか。

次回更新予定日:2020/04/04

ランキングに参加中です。よろしかったらポチッとお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村
PR
この記事にコメントする
Name :
Title :
Mail :
URL :
Color :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Comment :
Password :
HOME | 268  267  266  265  264  263  262  261  260  259  258 

忍者ブログ [PR]