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「それに里から魔珠の供給を断たれても、魔術師を犠牲にすれば自前でエネルギーを確保できるということだ」
「でも」
キリトは深刻な顔になった。
「魔術師はどうなるんだ?〈器〉になれるのが魔術師だけ。長期間その方法でエネルギーを確保していくとなると、〈器〉になるのが一度で済まなくなるだろう。そうなったら」
壊れる。あんな苦痛一度味わっただけでもエーベルのようになる。二度目には苦痛だけではなく恐怖も加わり、魔術師たちの心を蝕んでいくはず。人間として正常に機能できなくなるだろう。
「私は、メノウにこの調査を任せて欲しいと言った」
「そうだったな」
「次会うとき報告する義務がある」
二人はうつむいて黙り込んだ。しばらくしてやっとスイが口を開く。
「なあ、キリト。私が嘘をついて兵器などなかった、そんなものを作れるほどのエネルギーも確保できないとメノウに報告すれば」
「やめろよ、スイ」
スイも分かっている。そんな報告をしたって里が動き出すだけだ。いずれ真実にたどり着く。その間、輸出が止められて魔術師たちが〈器〉にならなければならない事態は回避されるかもしれないが、所詮時間稼ぎにしかならない。
「お前、メノウのこと信じてるんだろ」
スイははっと顔を上げた。
信じている。いや、信じたい。
「でも、メノウは」
涙が独りでに溢れてきた。
メノウは信じてくれている、そう言える自信がない。
揺らぐ。心の中で大きく揺らぐ。
「なんでだよ。メノウはお前が守るって決めた大切な友達なんだろう」
そう。メノウを守るために魔珠担当官になった。でも。
「スイ」
キリトが優しく肩に手を置く。
「友達なんだ。全部打ち明けて相談に乗ってもらえばいいじゃないか。二人でどうするか決めればいいじゃないか」
そうだ。でも。
「私たちは……同じ方向に向いていない」
キリトは立ち上がった。もう片方の肩にも手を載せて両手に力を込める。視線は鋭くスイの目を射抜いていた。
次回更新予定日:2020/03/14
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「でも」
キリトは深刻な顔になった。
「魔術師はどうなるんだ?〈器〉になれるのが魔術師だけ。長期間その方法でエネルギーを確保していくとなると、〈器〉になるのが一度で済まなくなるだろう。そうなったら」
壊れる。あんな苦痛一度味わっただけでもエーベルのようになる。二度目には苦痛だけではなく恐怖も加わり、魔術師たちの心を蝕んでいくはず。人間として正常に機能できなくなるだろう。
「私は、メノウにこの調査を任せて欲しいと言った」
「そうだったな」
「次会うとき報告する義務がある」
二人はうつむいて黙り込んだ。しばらくしてやっとスイが口を開く。
「なあ、キリト。私が嘘をついて兵器などなかった、そんなものを作れるほどのエネルギーも確保できないとメノウに報告すれば」
「やめろよ、スイ」
スイも分かっている。そんな報告をしたって里が動き出すだけだ。いずれ真実にたどり着く。その間、輸出が止められて魔術師たちが〈器〉にならなければならない事態は回避されるかもしれないが、所詮時間稼ぎにしかならない。
「お前、メノウのこと信じてるんだろ」
スイははっと顔を上げた。
信じている。いや、信じたい。
「でも、メノウは」
涙が独りでに溢れてきた。
メノウは信じてくれている、そう言える自信がない。
揺らぐ。心の中で大きく揺らぐ。
「なんでだよ。メノウはお前が守るって決めた大切な友達なんだろう」
そう。メノウを守るために魔珠担当官になった。でも。
「スイ」
キリトが優しく肩に手を置く。
「友達なんだ。全部打ち明けて相談に乗ってもらえばいいじゃないか。二人でどうするか決めればいいじゃないか」
そうだ。でも。
「私たちは……同じ方向に向いていない」
キリトは立ち上がった。もう片方の肩にも手を載せて両手に力を込める。視線は鋭くスイの目を射抜いていた。
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