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「スイ様、エスコートはいいので、明日の朝、お時間あったら、剣の腕少しは上達したか見ていただけませんか?」
「ドレスを着たレディが言うことか?」
透かさずスイに剣の手合わせを頼むエミリにキリトが呆れる。
「別にいいだろう。この衣装で手合わせするわけでもないし」
スイは冷静に仲裁に入ったつもりだったが、キリトに切り返される。
「お前はローブ着て手合わせするんだろうけどな」
「当然だ。他に何を着てくると言うんだ」
平然と言い放つスイを見て、アリサたちがくすくす笑う。
「せっかくだから、スイにダンスの相手してもらって、姉さんたちを困らせてこいよ。優雅な立ち振る舞いのスイ様にリードしてもらえば、お前でも少しはレディっぽく見えるぞ」
「失礼ね。でも、そんな暴挙をお姉様たちが許してくださるかしら?」
エミリは皮肉たっぷりに言って姉たちの方を見た。
「ええ。こんなチャンスなかなかないから相手してもらうといいわ。ご婦人方には『これは弟が私たちを陥れるために仕組んだ陰謀だ』って言っておくから」
本当にさらっとそう言って洗いざらい話してしまうのがアリサだ。アリサにかかると、嫉妬される前に巧みな話術で話を広め、先に危うい素材も笑い話に変えてしまう。
「では、スイ様、お願いしていいですか? 見てなさいよ、お兄様。さっきの発言、絶対に撤回してもらうんだから」
先ほどバカにされたのを根に持ったらしい。負けず嫌いなところもキリトとそっくりだ。スイは苦笑したかったが、ここは穏やかなよそ行きの笑顔を浮かべて右手を差し出す。エミリは何のためらいもなく、慣れたようにすっと自分の手を載せる。
演奏されていた曲が終わったのを見計らって、スイはエミリをダンスフロアに連れて行く。先ほど以上に視線がこちらに集まってくるのが分かった。
曲がスタートすると、スイはエミリの目を見てステップを踏み始めた。エミリは舞踏会になど滅多に来ないのに、余裕の表情で流れるように優雅にステップを踏み、ターンする。スイは最初エミリと息を合わせようと注意を払っていたが、その必要はないくらい息がぴったりだ。エミリとなら何も考えなくても踊れそうな気さえした。動作の一つ一つが心地よい。ダンスのうまいと言われる人とも何度か踊ったことはあるが、こんなに踊ることが楽しくて心地よいと感じたのは初めてだ。
踊っている人が一人また一人と足を止める。いつの間にか踊っているのはスイとエミリだけになった。誰もが二人の優雅に舞う姿に釘付けだ。
曲が終わって、二人が互いに礼をすると、大きな拍手が起こった。それが自分たちに向けられたものだと分かると、二人は誰もが見とれるような美しい姿勢で礼を返した。
「いやあ見事ですな」
ゆっくりと拍手をしながら、近づいてくる男がいた。
次回更新予定日:2018/10/06
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「ドレスを着たレディが言うことか?」
透かさずスイに剣の手合わせを頼むエミリにキリトが呆れる。
「別にいいだろう。この衣装で手合わせするわけでもないし」
スイは冷静に仲裁に入ったつもりだったが、キリトに切り返される。
「お前はローブ着て手合わせするんだろうけどな」
「当然だ。他に何を着てくると言うんだ」
平然と言い放つスイを見て、アリサたちがくすくす笑う。
「せっかくだから、スイにダンスの相手してもらって、姉さんたちを困らせてこいよ。優雅な立ち振る舞いのスイ様にリードしてもらえば、お前でも少しはレディっぽく見えるぞ」
「失礼ね。でも、そんな暴挙をお姉様たちが許してくださるかしら?」
エミリは皮肉たっぷりに言って姉たちの方を見た。
「ええ。こんなチャンスなかなかないから相手してもらうといいわ。ご婦人方には『これは弟が私たちを陥れるために仕組んだ陰謀だ』って言っておくから」
本当にさらっとそう言って洗いざらい話してしまうのがアリサだ。アリサにかかると、嫉妬される前に巧みな話術で話を広め、先に危うい素材も笑い話に変えてしまう。
「では、スイ様、お願いしていいですか? 見てなさいよ、お兄様。さっきの発言、絶対に撤回してもらうんだから」
先ほどバカにされたのを根に持ったらしい。負けず嫌いなところもキリトとそっくりだ。スイは苦笑したかったが、ここは穏やかなよそ行きの笑顔を浮かべて右手を差し出す。エミリは何のためらいもなく、慣れたようにすっと自分の手を載せる。
演奏されていた曲が終わったのを見計らって、スイはエミリをダンスフロアに連れて行く。先ほど以上に視線がこちらに集まってくるのが分かった。
曲がスタートすると、スイはエミリの目を見てステップを踏み始めた。エミリは舞踏会になど滅多に来ないのに、余裕の表情で流れるように優雅にステップを踏み、ターンする。スイは最初エミリと息を合わせようと注意を払っていたが、その必要はないくらい息がぴったりだ。エミリとなら何も考えなくても踊れそうな気さえした。動作の一つ一つが心地よい。ダンスのうまいと言われる人とも何度か踊ったことはあるが、こんなに踊ることが楽しくて心地よいと感じたのは初めてだ。
踊っている人が一人また一人と足を止める。いつの間にか踊っているのはスイとエミリだけになった。誰もが二人の優雅に舞う姿に釘付けだ。
曲が終わって、二人が互いに礼をすると、大きな拍手が起こった。それが自分たちに向けられたものだと分かると、二人は誰もが見とれるような美しい姿勢で礼を返した。
「いやあ見事ですな」
ゆっくりと拍手をしながら、近づいてくる男がいた。
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