魔珠 第16章 海に浮かぶ橋(6) 強さの果てに 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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グレンは何か言いかけて飲み込んだ。涙があふれてきたが、もう言葉にはできなかった。
 強くなるための揺るぎない信念。
 どれだけ強い力を手に入れても、もうエルを守ることはできない。その事実を受け入れることができないほどソードの悲しみは深いということだろう。ショックで時間がそこで止まったままなのだろう。
 力があれば。
 それしか考えられなかったのだろう。だから、がむしゃらに力を求めた。強くなることだけを考えて日々を過ごした。きっとそうすることでしか乗り越えられなかったのだ。
「ソード」
 つぶやくと、視界にくっきりと青い一筋の光が赤い光を真っ二つに切り裂き、消滅させる光景が入った。グレンは目を疑った。明らかにウィンターの魔力の限界を超えた一撃だ。
「倒す。必ずお前は私が倒す!」
 そのまま閃光を飛ばしながらウィンターは突進していった。体のあちらこちらに飛びかかり、全身を傷だらけにしていくソードの魔法など物ともしない勢いだ。
「何?」
 ソードもウィンターの予想外の魔力に驚きをあらわにした。だが、すぐに攻撃することをやめ、無抵抗でウィンターを迎えた。
「絶望するが良い」
 ソードがそう言い放ったのとウィンターが剣をソードの胸に突き立てたのは、ほぼ同時だった。
 金属が何かにぶつかる音がして、剣は胸を貫くことなく止まった。
「どういう、ことだ?」
 ソードは人間ではない。ヴァンパイアだ。だが、ヴァンパイアであっても、人間と同じように心臓を貫くことはできる。そして、心臓を貫けば、消滅するはず。
 ウィンターはソードの顔を見た。
 笑っている。
 余裕の笑みを浮かべている。
 ウィンターは先しか刺さっていない剣を抜いた。すると、抜いた場所から赤い光が漏れた。
「まさか」
 ウィンターは今まで感じていなかった傷の痛みが急に一気に来てその場にくずおれた。
 ソードの笑みは完全に勝ち誇った笑いに変わった。
「そんな……カーマ、ナイト?」
 見覚えがある。あの輝きはカーマナイトの核だ。
「どうして? ヴァンパイア化はしたけど、元々君は人間。カーマナイトの核を持つのは、上級ヴァンパイア。生物兵器の上級ヴァンパイアだけのはずなのに、どうして」

次回更新予定日:2018/04/21
 
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