魔珠 第16章 海に浮かぶ橋(4) 過去の清算 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「そんなことが……」
 驚いたままのウィンターにセージは続ける。
「そして、ヴァンパイアに噛まれてもなお意識を保った者は、人間離れした力を得る。あいつの素速さ、力、魔力、全てヴァンパイアに噛まれて得た力だ」
 ウィンターの横でソードがその話に聞き入っていた。
 ソードはその後、村に帰り、それまで以上に剣術や魔術の鍛錬に明け暮れた。
 そして、ある日突然姿を消した。

「私は王都に向かい、兵士になった。そして、とうとうマスターヴァンパイアと接触することに成功した」
「ソード、まさか……」
 ソードは青ざめたグレンをあざ笑うように言った。
「マスターヴァンパイアは喜んで良質の魔力を持つ私の血をすすってくれた。ウィンターほど恵まれてはいなかったが、ちゃんと一族の血は受け継いでいたらしい」
「そんな。なんでそんなことを」
「恨んでいたのだ。力がなくて妹を救えなかった自分と、力があったのに妹を救わなかった私を」
 目の前に立っていたウィンターが先に口を開く。すると、ソードも何もかも捨てきってしまって空っぽになったすがすがしいくらいの表情でうなずいた。
「妹を、エルを救えなかったのは、私に力がなかったからだ。だが、確かに、あのときお前が母をためらわずにすぐに刺していれば、エルが死ぬことはなかった」
「だから、私がお前を倒す。私がこうしてしまった、お前を!」
 ウィンターは思い切った力で閃光を飛ばした。ソードは避けようとしたが、避けきらず右腕に一本の赤い線の切り傷ができて、そこから血がにじんだ。そんなことは構わず、ソードはすぐに仕掛ける。
「受け取れ。これがエルの怒りだ!」
 ソードがその強大な魔力を光の球にしてウィンターにぶつける。
「エルの怒りなら」
 つぶやくと、ウィンターはその攻撃を避けず、結界を張って対抗した。光の威力にウィンターは少しずつ押されていたが、歯を食い縛って耐え、勢いを着実に削いでいった。このまましばらく持ちこたえれば攻撃を跳ね飛ばすこともできる。そう思ってがんばった。しかし、ソードの魔力の方が勝っていた。ウィンターがその力強さに耐えきれず、腕の力を持って行かれた瞬間、結界が砕け散り、ソードの攻撃に吹き飛ばされ、地に放り出され、背中を強打した。
「やめて!」
 双方とも本気だった。慈悲をかけて手加減しているような素振りは全く見せない。本気で倒しにかかっている。

次回更新予定日:2018/04/07

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