魔珠 第15章 神殿(10) 間一髪 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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 すぐにセレストを瞬間移動させ、盾にする。しかし、剣は下りてこなかった。瞬間移動してきたセレストの膝裏に足を絡めてそのまま全力で蹴り飛ばし、一気にヴィリジアンを〈告知者〉の胸に突き刺す。蹴り飛ばされたセレストは教壇から放り出された。
「陛下!」
 階段の下に退避していたエストルは一歩踏み込んでセレストの体を受け止めた。
「まだ、だよ」
〈告知者〉が手を伸ばすと、セレストの全身が赤い光に包まれる。赤い瞳が輝き、素速い動作でエストルが携帯していた短剣を腰から奪った。
「エストル!」
 もう間に合わなかった。短剣は真っ直ぐにエストルの胸を狙った。しかし、短剣の先はエストルの胸に当たると、そのまま突き刺さることなく落下した。少し遅れてどさっとセレストの体が傾く。エストルはしゃがんで、倒れてきたセレストの体を支える。
「陛下、陛下?」
「気を失っておられるだけだと思う」
 いつの間にか横に駆けつけてきていたグレンに気づき、エストルは教壇の上を見た。誰もいなかった。
「グレン……そうか」
 エストルは起こったことを確認するように静かにつぶやいた。
「それよりも、エストル、怪我は?」
 グレンはエストルの胸を見た。少しだけ血がにじんでいるが、浅そうだ。
〈告知者〉はヴィリジアンを刺された後もセレストを操り、エストルの命を狙った。だが、一瞬遅かった。カーマナイトの核が消滅し、魔力が完全に切れる方が先だった。
 エストルは胸の傷口に手を当て、簡単に治療した。セレストを腕に抱えたまま、エストルは辺りを見回した。
「ソードはこの部屋にはいなかったな」
 最後の上級ヴァンパイアである〈告知者〉とムーンホルン侵略の大切な駒であるセレストを護衛すると読んでいたのに。
「でも、やっぱり神殿にいると思う」
「この奥か?」
 エストルはゲートに続く扉を見た。この扉を開けると、屋外だ。周りは海で、広い幅の橋が架かっている。ソードは封印を閉じることのできるセレストが相手の手に渡った以上、ゲートを死守しに来るに違いない。神殿の外にいるとは考えにくい。
「エストル様、グレン!」
 ソフィアが勢いよく背後の廊下から続く扉を開けた。二人が振り返る。
「陛下……」
 エストルが腕に抱えているセレストの姿を見つけてソフィアは歩み寄った。

次回更新予定日:2018/03/03

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