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「撤退、したようね」
ソフィアは確認して目を閉じる。意識がそのまま落ちた。
「将軍、将軍!」
ルイはソフィアの体を揺すったが、返事はなかった。
「ルイ?」
よろけながらリンが近づいてくる。
「大丈夫。意識を失っただけ」
あのとき咄嗟に結界を張っていなかったら、どうなっていただろうと考えると、背筋がぞくっとした。
「そう。良かった」
「リンは大丈夫?」
「うん。魔力、使いすぎただけ。将軍、お願いね」
「分かった」
ルイはソフィアをおぶった。城壁を目指してゆっくり歩き出す。リンが後ろからよろよろとついてきた。
エストルは執務室にいた。先ほど上級ヴァンパイアが城壁の外側に出現したとの報告を受けた。指揮は基本的にソフィアに任せてある。応戦中なのだろう。正直どのような結果になるかは分からない。だが、エストルにはその戦闘があまり意味のあるものに思えなかった。ヴァンパイアの真の目的は他にある。
不意にエストルは妙な気配を感じる。ペンを走らせていた手を止め、すくっと立ち上がった。
「やはり来たか」
背後に〈追跡者〉の姿が現れる。先ほど負った傷はもう塞がっている。
「ムーンホルン王国宰相エストル。全てを知る者、そしてグレンが大切に思っている友」
エストルがぴくりと最後の言葉に反応する。
「お前、グレンの記憶ものぞいたのか?」
すると、〈追跡者〉は楽しそうに笑った。
「少しだけな。我々の欲しかった情報は落としてくれなかった。例えば」
〈追跡者〉の表情が険しくなった。
「ヴィリジアンはどこにあるのか、そしてその情報をグレンに与えたのは誰か」
エストルは押し黙った。ひんやりとした汗が額に滲んだ。
「グレンは意識と記憶を閉ざした。解答を引き出すことに我々は失敗した。だが、大したことではない」
〈追跡者〉は右手を伸ばして言い放った。
「お前に聞けばいい」
次回更新予定日:2016/09/24
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ソフィアは確認して目を閉じる。意識がそのまま落ちた。
「将軍、将軍!」
ルイはソフィアの体を揺すったが、返事はなかった。
「ルイ?」
よろけながらリンが近づいてくる。
「大丈夫。意識を失っただけ」
あのとき咄嗟に結界を張っていなかったら、どうなっていただろうと考えると、背筋がぞくっとした。
「そう。良かった」
「リンは大丈夫?」
「うん。魔力、使いすぎただけ。将軍、お願いね」
「分かった」
ルイはソフィアをおぶった。城壁を目指してゆっくり歩き出す。リンが後ろからよろよろとついてきた。
エストルは執務室にいた。先ほど上級ヴァンパイアが城壁の外側に出現したとの報告を受けた。指揮は基本的にソフィアに任せてある。応戦中なのだろう。正直どのような結果になるかは分からない。だが、エストルにはその戦闘があまり意味のあるものに思えなかった。ヴァンパイアの真の目的は他にある。
不意にエストルは妙な気配を感じる。ペンを走らせていた手を止め、すくっと立ち上がった。
「やはり来たか」
背後に〈追跡者〉の姿が現れる。先ほど負った傷はもう塞がっている。
「ムーンホルン王国宰相エストル。全てを知る者、そしてグレンが大切に思っている友」
エストルがぴくりと最後の言葉に反応する。
「お前、グレンの記憶ものぞいたのか?」
すると、〈追跡者〉は楽しそうに笑った。
「少しだけな。我々の欲しかった情報は落としてくれなかった。例えば」
〈追跡者〉の表情が険しくなった。
「ヴィリジアンはどこにあるのか、そしてその情報をグレンに与えたのは誰か」
エストルは押し黙った。ひんやりとした汗が額に滲んだ。
「グレンは意識と記憶を閉ざした。解答を引き出すことに我々は失敗した。だが、大したことではない」
〈追跡者〉は右手を伸ばして言い放った。
「お前に聞けばいい」
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