魔珠 第9章 スア(1) 壁外戦 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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急に空を暗い雲が覆い出す。ソフィアは気になってふと空を見上げる。そのときだった。異様な気配を前方に感じた。次の瞬間、もう周りの兵士たちに指示を飛ばしていた。
「敵だ。撃て!」
 兵士たちは矢や閃光を放った。空間が裂け、〈追跡者〉の姿が現れる。
「くっ」
 集中砲火を浴び、少し後退を迫られる。
「攻撃をやめてシールドを展開して」
 ソフィアが指示すると、すぐに兵士たちが従う。指揮系統は完璧だ。
「リン、ルイ、行くわよ」
 三人は〈追跡者〉に向かって走り出した。
「ルイ、シールド解除!」
 距離をつめると、ソフィアの指示が飛ぶ。ルイが左手を広げて宙に水平線を描くと、シールドは瞬く間に消えた。ソフィアがすぐに最初の一撃を放つ。〈追跡者〉は軽々と避けたが、次のリンの攻撃は避けきれなかった。すっと浅い傷がつき、細く赤い線が腕に現れる。だが、休んでいる暇はなかった。続いてルイが、そしてまたソフィアが、三人の剣が次々と容赦ない攻撃を加える。〈追跡者〉は少し後退した。
「なかなかやる」
 にやりと笑うと、手に光をまとった剣が現れる。実物の剣ではない。魔力で作った剣だ。
「ふうん。魔法だけじゃなくて剣も使うのね」
 ソフィアが言うと、〈追跡者〉は口元を吊り上げた。
「そのときの気分次第だ。来い!」
 言われて三人が再び襲いかかる。〈追跡者〉は的確に三人の剣の攻撃を光の剣で跳ね返してくる。
「きりがない!」
 ソフィアは後ろに下がったヴァンパイアを狙って助走する。
「リン、ルイ、下がって!」
 ソフィアは渾身の魔力を剣に込めて宙に大きく弧を描いた。それを見て〈追跡者〉も同じ動作をした。二つの弧は高速でぶつかることなく上下で交差し、それぞれの標的に凄まじい爆音を立てながら衝突した。間髪を入れず、リンが巨大な光の球を放った。ルイはソフィアの前に結界を張った。
「将軍!」
 ソフィアは結界を張ってもらったにもかかわらず、ルイの方まで吹き飛ばされた。〈追跡者〉はソフィアの攻撃を胸に食らい、よろめいた。傷はそれほど深くなかったが、次に襲ってきたリンの魔法がその傷を深くえぐり出した。多量の血が噴き出す。〈追跡者〉は力なく宙に浮きながら胸に手を当てた。
「そんな、ばかな……人間、ごときに……」
 〈追跡者〉はマントで全身を覆い、消えた。

次回更新予定日:2016/09/17

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