魔珠 第8章 ロソー城(11) 引き継ぎ 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「ソフィア、疲れてない?」
 長旅から帰ってきたばかりのソフィアをグレンが気遣う。
「大丈夫。しばらくここにいられるみたいだしね」
「ソードが帰ってきたらまた交代かな」
「多分そんな感じでしょうね」
 ソードと自分のどちらが早く帰ってくるだろうとグレンは考えた。スアの方が距離的には近いので、同時くらいになるかもしれない。
「部隊長を集める。十一時に会議室だ」
「十一時ね」
 二人は別れた。グレンはクレッチとデュランに手伝ってもらい、部隊長を集めた。十一時には会議が始まり、全員で警備の確認をしながら一通り説明をし、引き継ぎを行った。会議が終了すると、グレンとソフィアは部屋から出た。二人で一度城壁を巡回して状況を見て回ることにした。
「大丈夫そう?」
 グレンが心配して尋ねる。
「そうね。あなたやソードでも苦戦する相手なんだから、手強いけど」
 ソフィアが深刻な顔をする。
「私には、リンとルイがついているから大丈夫。何とかする」
 リンとルイはソフィアの部下だ。二人は双子で、リンが姉、ルイが弟だ。ソフィアはグレンやソードとは対照的に部下を積極的に任務に連れて行く。ほとんど一緒に行動していると言っても過言ではない。絶対的な信頼を置き、立てる作戦も全て二人がいることを前提としている。
「すごいね、ソフィアは。僕もソフィアくらい部下をうまく使いこなせたらいいのに」
 グレンが羨ましがると、ソフィアは笑った。
「できる。あなたなら。連れて行かないから、そう思うだけ」
 城の周囲を一周ぐるりと回り終わると、グレンはソフィアに言った。
「それじゃあ、任せたよ」
 ソフィアはグレンを安心させるように大きくうなずいた。
 ソフィアと別れると、急にまたヴァンパイア討伐を命じられたことを思い出して憂鬱な気分になった。それを振り払うように早足で自室に向かい、旅支度を始めた。さっさと行ってさっさと終わらせてしまおう。グレンはその日のうちにエストルに任務の詳細を聞きに行き、翌朝には城を出た。

次回更新予定日:2016/09/10

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