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「さすが王騎士だ。速い」
「よくついてくるね。兵士でもこのレベルだとついてこれる人の方が少数派だよ」
「それは光栄だな」
嬉しそうに言いながら、エストルはグレンの剣を押し退ける。間髪入れずに次の一撃が飛んでくる。
かなり長い時間手合わせは続いた。グレンはエストルの攻撃をぴしゃりと払うと、後ろに跳んで剣の届かない距離に着地した。透かさずそのまま踏み込み、エストルの剣を狙う。エストルはその一撃は払いのけたが、力が足りなかった。剣を構え直す前にグレンの剣先はエストルの喉元に来ていた。
「あ、ごめん。つい熱くなっちゃって」
「大人げないな。相手は文官だぞ」
「士官学校を首席で卒業しているだろ」
エストルが肩を激しく上下させているのを見て、グレンは剣を下ろした。揺れが大きく、速く剣を引っ込めないと、どこかに当たって怪我をさせてしまいそうだった。
「少し休もうか」
「ああ。そうさせてもらおう」
グレンが最初いた場所に戻って草の上に座ると、横にエストルが仰向けになって寝そべった。両腕を気持ちよさそうに広げている。らしくない行動にグレンは目を丸くする。まだ息切れしているようで、胸が大きく動いていた。エストルは鼓動を全身で聴くように目を閉じていた。
「ここは変わらず気持ちいいな」
ここは士官学校の裏の敷地だった。生徒たちがくつろいだり鍛錬したりできるフリースペース。今日は休みで誰もいないが、休み時間や放課後は生徒たちの姿が見られる。
「よくここでこうやって手合わせしたよね」
「実力の差はあの頃とは比べものにならなくなってしまったがな」
それを聞いて、グレンは少し悲しくなった。エストルが思っている以上に強くなってしまっているのだ。人間でなくなって。
「私はゆくゆくは国王陛下の次に高い地位の人物にならなくてはならないのだから、陛下の通われていない学校では、当然何でも一番でなくてはならないと考えていた。だから、実技でお前に負けたとき、悔しいのと同時に、これではいけないと強く思った」
「それで、あんなに手合わせを?」
すると、エストルはくすっと笑った。
「最初はそうだった。でも、何回か手合わせをするうちに、お前の技や魔力、それに人柄に惹かれていった。それを少しでも身につけたいと」
グレンも、あまり感情を表に出さないエストルだったが、手合わせを重ねるうちに、その人柄がよく分かってきた。昔から会話をする以上に、相手の技や魔力の波長のようなものでその性格をつかむのが得意だった。凛としながらも仲間を思いやる心を持ったエストルをグレンも慕った。自然に二人は心を通わせるようになった。
次回更新予定日:2016/07/23
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「それは光栄だな」
嬉しそうに言いながら、エストルはグレンの剣を押し退ける。間髪入れずに次の一撃が飛んでくる。
かなり長い時間手合わせは続いた。グレンはエストルの攻撃をぴしゃりと払うと、後ろに跳んで剣の届かない距離に着地した。透かさずそのまま踏み込み、エストルの剣を狙う。エストルはその一撃は払いのけたが、力が足りなかった。剣を構え直す前にグレンの剣先はエストルの喉元に来ていた。
「あ、ごめん。つい熱くなっちゃって」
「大人げないな。相手は文官だぞ」
「士官学校を首席で卒業しているだろ」
エストルが肩を激しく上下させているのを見て、グレンは剣を下ろした。揺れが大きく、速く剣を引っ込めないと、どこかに当たって怪我をさせてしまいそうだった。
「少し休もうか」
「ああ。そうさせてもらおう」
グレンが最初いた場所に戻って草の上に座ると、横にエストルが仰向けになって寝そべった。両腕を気持ちよさそうに広げている。らしくない行動にグレンは目を丸くする。まだ息切れしているようで、胸が大きく動いていた。エストルは鼓動を全身で聴くように目を閉じていた。
「ここは変わらず気持ちいいな」
ここは士官学校の裏の敷地だった。生徒たちがくつろいだり鍛錬したりできるフリースペース。今日は休みで誰もいないが、休み時間や放課後は生徒たちの姿が見られる。
「よくここでこうやって手合わせしたよね」
「実力の差はあの頃とは比べものにならなくなってしまったがな」
それを聞いて、グレンは少し悲しくなった。エストルが思っている以上に強くなってしまっているのだ。人間でなくなって。
「私はゆくゆくは国王陛下の次に高い地位の人物にならなくてはならないのだから、陛下の通われていない学校では、当然何でも一番でなくてはならないと考えていた。だから、実技でお前に負けたとき、悔しいのと同時に、これではいけないと強く思った」
「それで、あんなに手合わせを?」
すると、エストルはくすっと笑った。
「最初はそうだった。でも、何回か手合わせをするうちに、お前の技や魔力、それに人柄に惹かれていった。それを少しでも身につけたいと」
グレンも、あまり感情を表に出さないエストルだったが、手合わせを重ねるうちに、その人柄がよく分かってきた。昔から会話をする以上に、相手の技や魔力の波長のようなものでその性格をつかむのが得意だった。凛としながらも仲間を思いやる心を持ったエストルをグレンも慕った。自然に二人は心を通わせるようになった。
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