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「本当に、魔力が目的だったのだろうか」
不意につぶやいたエストルをデュランは見た。デュランは素速くエストルの思考回路を読み取り、即答した。
「何かグレン将軍をつぶしにかかっているような感じもします」
デュランの回答にエストルはうなずいた。
クレッチの記憶をのぞいたのは単純にグレンに関する情報を引き出すためだろう。そのためにグレンの部下であるクレッチを狙った。だが、クレッチの役割はそれだけではなかった。クレッチとデュランは裏ではエストルの足として各地を回り情報収集をしている。そのことが<追跡者>の知るところとなったわけだ。
「ところで、クレッチは?」
「はい。グレン将軍と部屋に運びました。グレン将軍によると、魔力がほとんどない状態で意識を失っているだけだということです。記憶をのぞかれないように抵抗したのでしょうか」
「そうか。がんばったのだな」
少しだけ口元が緩んだのを見て、デュランの表情がぱっと明るくなった。冷静でそんなに感情をあらわにすることはないエストルだが、部下への気遣いはいつも人一倍である。
「今、グレン将軍が付き添ってくださっています。少し休めば気がつくとおっしゃってました」
「分かった。報告、ご苦労だった。お前もそろそろ戻ってやれ」
「はい」
明るい声で答えると、デュランは消えた。一人になった薄暗い部屋でエストルはぼんやりと夜空を見た。
「次は私が狙われるかもしれないな」
ふと本棚に立てかけてある剣に目をやった。
「できることはしなければ」
「グレン将軍?」
急にがばっとクレッチが起き上がる。グレンも驚いたが、それ以上にクレッチが慌てている。
「私、なぜここに」
「落ち着いて、クレッチ」
グレンはそっと布団をかぶせながら、クレッチの体を倒してやった。そして、静かに言った。
「君は上級ヴァンパイアに会って意識を失って倒れた。上級ヴァンパイアは君の記憶をのぞいたと言った。覚えてる?」
「私の、記憶?」
表情は失われ、唇だけが動いていた。
次回更新予定日:2016/06/18
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不意につぶやいたエストルをデュランは見た。デュランは素速くエストルの思考回路を読み取り、即答した。
「何かグレン将軍をつぶしにかかっているような感じもします」
デュランの回答にエストルはうなずいた。
クレッチの記憶をのぞいたのは単純にグレンに関する情報を引き出すためだろう。そのためにグレンの部下であるクレッチを狙った。だが、クレッチの役割はそれだけではなかった。クレッチとデュランは裏ではエストルの足として各地を回り情報収集をしている。そのことが<追跡者>の知るところとなったわけだ。
「ところで、クレッチは?」
「はい。グレン将軍と部屋に運びました。グレン将軍によると、魔力がほとんどない状態で意識を失っているだけだということです。記憶をのぞかれないように抵抗したのでしょうか」
「そうか。がんばったのだな」
少しだけ口元が緩んだのを見て、デュランの表情がぱっと明るくなった。冷静でそんなに感情をあらわにすることはないエストルだが、部下への気遣いはいつも人一倍である。
「今、グレン将軍が付き添ってくださっています。少し休めば気がつくとおっしゃってました」
「分かった。報告、ご苦労だった。お前もそろそろ戻ってやれ」
「はい」
明るい声で答えると、デュランは消えた。一人になった薄暗い部屋でエストルはぼんやりと夜空を見た。
「次は私が狙われるかもしれないな」
ふと本棚に立てかけてある剣に目をやった。
「できることはしなければ」
「グレン将軍?」
急にがばっとクレッチが起き上がる。グレンも驚いたが、それ以上にクレッチが慌てている。
「私、なぜここに」
「落ち着いて、クレッチ」
グレンはそっと布団をかぶせながら、クレッチの体を倒してやった。そして、静かに言った。
「君は上級ヴァンパイアに会って意識を失って倒れた。上級ヴァンパイアは君の記憶をのぞいたと言った。覚えてる?」
「私の、記憶?」
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