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「ねえ、エストル」
グレンが緑色の優しい眼差しでエストルを見つめる。
「一つぐらいエストルよりもできること持っていてもいいでしょ」
エストルはきょとんとした。すると、グレンがエストルの手を取って握った。
「一つぐらい僕に任せてよ。そうしないと、エストル、一人で全部背負っちゃうでしょ」
「グレン……」
これだけたくさんのことを背負っているのに、まだ人のことを背負うのか。エストルは思った。こんなにたくさんのことを背負わせているのに。
手がとても暖かい。グレンの持っている魔力と同じ暖かさ。この暖かさはグレンだけが持っている、グレンだけが育めた暖かさなのだろう。
「ありがとう」
手をぎゅっと握り返し、エストルが体を起こした。
「さあ、もう一戦お願いしようか」
「いいよ。いつでもかかってきて」
小気味良い金属音が風に乗って響く。二人は青空の下、二人だけの時間を楽しんだ。
呼び出しがあったので、謁見室の方に歩いていると、長い廊下の途中で少し前を歩くソードの姿を見つけた。
「ソード」
走って距離をつめて、後ろから声をかける。
「グレンか」
気がついてもソードは表情も歩く速度も変えない。
「次の任務かなあ」
「そうだろう」
数歩そのまま歩くと、グレンは口を開く。
「昨日の夜、クレッチが上級ヴァンパイアに襲われたんだ」
「何?」
ここでソードは初めて足を止めた。
「どこで?」
「森で」
「森って、城内の森か?」
「そう」
頭の片隅で謁見室に行く途中だったことを思い出し、ソードは再び歩き出した。
「何をしに来たんだ?」
次回更新予定日:2016/07/30
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グレンが緑色の優しい眼差しでエストルを見つめる。
「一つぐらいエストルよりもできること持っていてもいいでしょ」
エストルはきょとんとした。すると、グレンがエストルの手を取って握った。
「一つぐらい僕に任せてよ。そうしないと、エストル、一人で全部背負っちゃうでしょ」
「グレン……」
これだけたくさんのことを背負っているのに、まだ人のことを背負うのか。エストルは思った。こんなにたくさんのことを背負わせているのに。
手がとても暖かい。グレンの持っている魔力と同じ暖かさ。この暖かさはグレンだけが持っている、グレンだけが育めた暖かさなのだろう。
「ありがとう」
手をぎゅっと握り返し、エストルが体を起こした。
「さあ、もう一戦お願いしようか」
「いいよ。いつでもかかってきて」
小気味良い金属音が風に乗って響く。二人は青空の下、二人だけの時間を楽しんだ。
呼び出しがあったので、謁見室の方に歩いていると、長い廊下の途中で少し前を歩くソードの姿を見つけた。
「ソード」
走って距離をつめて、後ろから声をかける。
「グレンか」
気がついてもソードは表情も歩く速度も変えない。
「次の任務かなあ」
「そうだろう」
数歩そのまま歩くと、グレンは口を開く。
「昨日の夜、クレッチが上級ヴァンパイアに襲われたんだ」
「何?」
ここでソードは初めて足を止めた。
「どこで?」
「森で」
「森って、城内の森か?」
「そう」
頭の片隅で謁見室に行く途中だったことを思い出し、ソードは再び歩き出した。
「何をしに来たんだ?」
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