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「そうか。それなら良かった」
安堵したような穏やかな顔になったエストルの横顔をグレンはうかがった。
「僕の部下のことまで心配してくれるんだね、エストルは」
「当然だ。お前の部下は私の部下でもある」
茶番だな。そう思うと少し笑えてくる。
「報告は以上か?」
「うん。以上」
「では」
エストルは剣を持って立ち上がった。
「早速手合わせ願おうか」
グレンもうなずいて剣を手に取る。エストルと少し距離を取るために歩き始める。
「それにしても珍しいね。手合わせに誘うなんて」
「昨日、お前がソードと勝負しているところを見ていたら、体が疼いてな」
「宰相になっても体は忘れてないんだ。実技もトップだったもんね」
「お前さえいなければな」
士官学校でもエストルは当たり前のように常に首席だった。どの科目でもトップの成績を修めた。だが、二科目、「剣術実技」と「魔術実技」でだけは常に二位だった。それまで二位などという成績を取ったことのないエストルにとっては衝撃だった。しかし、二つの実技ではどうやってもグレンに勝てなかった。
二人は立ち止まって向かい合わせになった。そよ風が草を撫でる。
「いつでもいいよ」
グレンは剣を抜いて構えた。すると、素速い動作でエストルも剣を抜き、グレンにかかってきた。想像していた速度と違う。リズムが崩れて一瞬出遅れるが、すぐに正確に間合いを計り、最初の一撃を剣で受け止める。その一撃も想像を遥かに超える重さだった。
「なめられたものだ」
グレンの思考を読み取ったかのようにエストルは笑う。
「全然腕が落ちてないんだね。むしろ上がっている」
「これでも毎朝鍛錬は欠かせない。時間があれば、兵士を捕まえて相手してもらうこともある」
「やっぱりエストルはすごいね」
穏やかな表情のまま、すっとエストルの剣を振り払う。
「もう少し本気を出してもらっても大丈夫だ」
「言ったね」
にやりと笑って今度はグレンから仕掛ける。エストルが跳ね返すと、すぐに次の攻撃を繰り出した。速いテンポで金属音が響き渡る。ひときわ鋭い音が響いて剣が交差し、動かなくなる。
次回更新予定日:2016/07/16
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「僕の部下のことまで心配してくれるんだね、エストルは」
「当然だ。お前の部下は私の部下でもある」
茶番だな。そう思うと少し笑えてくる。
「報告は以上か?」
「うん。以上」
「では」
エストルは剣を持って立ち上がった。
「早速手合わせ願おうか」
グレンもうなずいて剣を手に取る。エストルと少し距離を取るために歩き始める。
「それにしても珍しいね。手合わせに誘うなんて」
「昨日、お前がソードと勝負しているところを見ていたら、体が疼いてな」
「宰相になっても体は忘れてないんだ。実技もトップだったもんね」
「お前さえいなければな」
士官学校でもエストルは当たり前のように常に首席だった。どの科目でもトップの成績を修めた。だが、二科目、「剣術実技」と「魔術実技」でだけは常に二位だった。それまで二位などという成績を取ったことのないエストルにとっては衝撃だった。しかし、二つの実技ではどうやってもグレンに勝てなかった。
二人は立ち止まって向かい合わせになった。そよ風が草を撫でる。
「いつでもいいよ」
グレンは剣を抜いて構えた。すると、素速い動作でエストルも剣を抜き、グレンにかかってきた。想像していた速度と違う。リズムが崩れて一瞬出遅れるが、すぐに正確に間合いを計り、最初の一撃を剣で受け止める。その一撃も想像を遥かに超える重さだった。
「なめられたものだ」
グレンの思考を読み取ったかのようにエストルは笑う。
「全然腕が落ちてないんだね。むしろ上がっている」
「これでも毎朝鍛錬は欠かせない。時間があれば、兵士を捕まえて相手してもらうこともある」
「やっぱりエストルはすごいね」
穏やかな表情のまま、すっとエストルの剣を振り払う。
「もう少し本気を出してもらっても大丈夫だ」
「言ったね」
にやりと笑って今度はグレンから仕掛ける。エストルが跳ね返すと、すぐに次の攻撃を繰り出した。速いテンポで金属音が響き渡る。ひときわ鋭い音が響いて剣が交差し、動かなくなる。
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