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渇いている。
潤したい。
「いいよ、グレン」
優しい声がした。グレンは振り返ってそのまま反射的に噛みつく。エストルが微笑みながら目を閉じていく。
「また……まただ」
グレンはベッドの中で頭を抱えた。
「嫌だ。どうして」
どこまでもまとわりついてくる幻覚。取れたはずの疲労がずっしりとのしかかる。
「あ、そうだ」
だるい体を無理やり引きずり、ベッドから出る。
約束していたんだった。
気持ちのいい風が吹いていた。空も抜けるように青い。見上げるとどこまでも無限に続く青。吸い込まれそうになる。この場所から見る空は広い。それはここがちょっとした草原のようになっているからだ。昔から変わらないこの景色。
「済まないな、こんな朝早くから」
エストルだった。手には懐かしい剣を持っている。久しぶりに手にしているのを見る。
一瞬、エストルに噛みつくイメージが脳裏をよぎったが、すぐに振り払う。
「どうかしたか?」
敏感に察知したエストルにグレンは首を振る。
「ううん。僕もちょうど報告したいことがあって。どっちにしても君に会いに行くつもりだったんだ」
昨日の夜、部屋に帰ると、手紙が投げ込まれてあった。エストルからだった。明日の朝六時から手合わせをして欲しいと。
「報告? 先に聞こう」
エストルは不審がりながらも柔らかい草の上に腰かけて剣を置いた。グレンも横に座った。
「昨日の夜、城内の森に上級ヴァンパイアが現れたんだ」
「上級ヴァンパイア?」
この報告はすでにデュランから聞いているが、エストルはいつもと変わらない反応をするよう努めた。あまり驚かず怪訝そうな表情をする。
「部下が森のパトロールから戻ってこないから探しに行ったんだ。そしたら、突然現れて」
「何をしに来たんだ?」
初めて聞いたような振りをし続ける。グレンはもちろん気づかない。
「僕の部下の記憶をのぞいたと言っていた」
次回更新予定日:2016/07/02
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「いいよ、グレン」
優しい声がした。グレンは振り返ってそのまま反射的に噛みつく。エストルが微笑みながら目を閉じていく。
「また……まただ」
グレンはベッドの中で頭を抱えた。
「嫌だ。どうして」
どこまでもまとわりついてくる幻覚。取れたはずの疲労がずっしりとのしかかる。
「あ、そうだ」
だるい体を無理やり引きずり、ベッドから出る。
約束していたんだった。
気持ちのいい風が吹いていた。空も抜けるように青い。見上げるとどこまでも無限に続く青。吸い込まれそうになる。この場所から見る空は広い。それはここがちょっとした草原のようになっているからだ。昔から変わらないこの景色。
「済まないな、こんな朝早くから」
エストルだった。手には懐かしい剣を持っている。久しぶりに手にしているのを見る。
一瞬、エストルに噛みつくイメージが脳裏をよぎったが、すぐに振り払う。
「どうかしたか?」
敏感に察知したエストルにグレンは首を振る。
「ううん。僕もちょうど報告したいことがあって。どっちにしても君に会いに行くつもりだったんだ」
昨日の夜、部屋に帰ると、手紙が投げ込まれてあった。エストルからだった。明日の朝六時から手合わせをして欲しいと。
「報告? 先に聞こう」
エストルは不審がりながらも柔らかい草の上に腰かけて剣を置いた。グレンも横に座った。
「昨日の夜、城内の森に上級ヴァンパイアが現れたんだ」
「上級ヴァンパイア?」
この報告はすでにデュランから聞いているが、エストルはいつもと変わらない反応をするよう努めた。あまり驚かず怪訝そうな表情をする。
「部下が森のパトロールから戻ってこないから探しに行ったんだ。そしたら、突然現れて」
「何をしに来たんだ?」
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