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クレッチの部屋は兵舎にある。城の離れにある。
「先に詰め所に詳しい報告をしてきます。クレッチについていていただいてもいいですか?」
「うん。そうする」
二人はクレッチをベッドに降ろした。
「ねえ、帰りにこれで何か軽く食べられるもの買ってきてよ」
デュランに金貨を握らせる。
「クレッチもうすぐ気がつくと思うんだ。そしたら、三人で食事させてもらおう。ここで」
「分かりました。行ってきます」
笑顔で金貨を握って、デュランは部屋を出ていった。
グレンはクレッチの顔を見た。
<追跡者>は確かにクレッチの記憶をのぞいたと言った。さらに、それが興味深いものだったと。<追跡者>はクレッチからどのような情報を得たのであろうか。城の内部の様子を知り、襲撃をかけようとしているのか。それとも何かグレンについて戦いが有利になるような情報をつかんだのか。心当たりはないが、何が受け手の琴線に触れるか分からない。
クレッチの手を握ってみる。とても冷たい。そして、魔力がほとんど感じられない。いつもなら、ここで迷わず自分の魔力を分けるのだが、今日はそれができない。まだ自身が完全に回復していない上に、上級ヴァンパイアに会って気が動転してしまっている。すぐに仕掛けてくることはないと分かっていても、戦える状態になっていないと不安になる。
なんでこんなにびくびくしているんだろう。
グレンは頭を抱える。
もやもやした気持ちのままデュランの帰りを待つ。
デュランは詰め所に行って手短に報告を済ませると、自室に戻った。ドアの鍵を閉めると、木の床に手をかざした。魔力を注ぐと、光とともに魔法陣が現れる。デュランは静かに魔法陣に乗った。光の帯が伸びてその姿は消えた。
「どうした、デュラン?」
エストルはペンを走らせていた手を休め、まだ姿の見えていない相手に尋ねた。すると、背後にデュランが姿を現した。
「エストル様、報告したいことがございまして」
「何かあったのか?」
「先ほど城内の森で上級ヴァンパイアと遭遇いたしました」
「何?」
森とはいえ、城の敷地内に侵入してくるとは。エストルはあまりにも大胆な手口に唖然とした。
「報告を聞こう」
次回更新予定日:2016/06/04
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「先に詰め所に詳しい報告をしてきます。クレッチについていていただいてもいいですか?」
「うん。そうする」
二人はクレッチをベッドに降ろした。
「ねえ、帰りにこれで何か軽く食べられるもの買ってきてよ」
デュランに金貨を握らせる。
「クレッチもうすぐ気がつくと思うんだ。そしたら、三人で食事させてもらおう。ここで」
「分かりました。行ってきます」
笑顔で金貨を握って、デュランは部屋を出ていった。
グレンはクレッチの顔を見た。
<追跡者>は確かにクレッチの記憶をのぞいたと言った。さらに、それが興味深いものだったと。<追跡者>はクレッチからどのような情報を得たのであろうか。城の内部の様子を知り、襲撃をかけようとしているのか。それとも何かグレンについて戦いが有利になるような情報をつかんだのか。心当たりはないが、何が受け手の琴線に触れるか分からない。
クレッチの手を握ってみる。とても冷たい。そして、魔力がほとんど感じられない。いつもなら、ここで迷わず自分の魔力を分けるのだが、今日はそれができない。まだ自身が完全に回復していない上に、上級ヴァンパイアに会って気が動転してしまっている。すぐに仕掛けてくることはないと分かっていても、戦える状態になっていないと不安になる。
なんでこんなにびくびくしているんだろう。
グレンは頭を抱える。
もやもやした気持ちのままデュランの帰りを待つ。
デュランは詰め所に行って手短に報告を済ませると、自室に戻った。ドアの鍵を閉めると、木の床に手をかざした。魔力を注ぐと、光とともに魔法陣が現れる。デュランは静かに魔法陣に乗った。光の帯が伸びてその姿は消えた。
「どうした、デュラン?」
エストルはペンを走らせていた手を休め、まだ姿の見えていない相手に尋ねた。すると、背後にデュランが姿を現した。
「エストル様、報告したいことがございまして」
「何かあったのか?」
「先ほど城内の森で上級ヴァンパイアと遭遇いたしました」
「何?」
森とはいえ、城の敷地内に侵入してくるとは。エストルはあまりにも大胆な手口に唖然とした。
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