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午前八時過ぎ。メノウはいちばん旅人が出発する時間帯に北門の馬屋から出てきた。横には栗色の毛並みの良い馬を従わせていた。
「いい馬を選んでもらったな」
スイがぽんぽん叩くと、馬が顔をなすりつけてきた。
「人懐っこい子だね」
メノウが笑った。
「朝早くから送りに来てくれてありがとね」
メノウが馬に跨がった。メノウが馬に乗ったのを見上げて確認しながら、スイの目は右手にある馬屋で馬の品定めをしたり、手綱を引っ張って歩いている人を三人ほど捕らえていた。三人ともこの少し肌寒い時期に旅人が愛用する茶色のフード付きマントをすっぽりとかぶっている。そのうちの一人が馬屋の事務所の建物に入ったタイミングを見計らって、スイは言った。
「気をつけて」
スイはしばらく北西の街道に向かったメノウの姿を追っていたが、姿が見えなくなる前に背を向け、来た道を早足で歩き出した。程なく後方から馬の足音が聞こえてきた。
順調に尾行されているようだ。
スイはその足で私邸に戻り、いつも着ている黒いローブを着替えた。最後にやはり旅人御用達の茶色のフード付きマントを羽織った。
「留守を頼む」
すると、シェリスが扉を開けながら、にこやかに微笑む。
「はい。いってらっしゃいませ、スイ様」
スイは念のため、いつもより注意して周囲をうかがいながら馬屋まで歩いていった。尾行する者こそ監視されていないか注意を払うべきだと父に叩き込まれている。
「おや、スイ様もお出かけで?」
顔なじみの馬屋の主人と会話を交わしながら、スイは用紙に記入を済ませた。北門の馬屋は両親の住む屋敷に行くときに利用させてもらっているので、顔も覚えられている。
「この馬にしよう」
姿を現したとき、いちばん最初にちらっとこちらを見て目が合った馬がいた。神経質な正確なのかと思って観察していたが、その後はずっと平然としている。足もしっかりしている。
馬屋の主人がタグを確認し、番号を用紙に書いた。手続き完了だ。
スイも北門から出て、もうとっくに姿は見えなくなっていたが、メノウ、そして尾行が通ったはずの街道を途中まで進んだ。そこからイシスへの街道に入ると、少し速度を上げた。
次回更新予定日:2018/12/08
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「いい馬を選んでもらったな」
スイがぽんぽん叩くと、馬が顔をなすりつけてきた。
「人懐っこい子だね」
メノウが笑った。
「朝早くから送りに来てくれてありがとね」
メノウが馬に跨がった。メノウが馬に乗ったのを見上げて確認しながら、スイの目は右手にある馬屋で馬の品定めをしたり、手綱を引っ張って歩いている人を三人ほど捕らえていた。三人ともこの少し肌寒い時期に旅人が愛用する茶色のフード付きマントをすっぽりとかぶっている。そのうちの一人が馬屋の事務所の建物に入ったタイミングを見計らって、スイは言った。
「気をつけて」
スイはしばらく北西の街道に向かったメノウの姿を追っていたが、姿が見えなくなる前に背を向け、来た道を早足で歩き出した。程なく後方から馬の足音が聞こえてきた。
順調に尾行されているようだ。
スイはその足で私邸に戻り、いつも着ている黒いローブを着替えた。最後にやはり旅人御用達の茶色のフード付きマントを羽織った。
「留守を頼む」
すると、シェリスが扉を開けながら、にこやかに微笑む。
「はい。いってらっしゃいませ、スイ様」
スイは念のため、いつもより注意して周囲をうかがいながら馬屋まで歩いていった。尾行する者こそ監視されていないか注意を払うべきだと父に叩き込まれている。
「おや、スイ様もお出かけで?」
顔なじみの馬屋の主人と会話を交わしながら、スイは用紙に記入を済ませた。北門の馬屋は両親の住む屋敷に行くときに利用させてもらっているので、顔も覚えられている。
「この馬にしよう」
姿を現したとき、いちばん最初にちらっとこちらを見て目が合った馬がいた。神経質な正確なのかと思って観察していたが、その後はずっと平然としている。足もしっかりしている。
馬屋の主人がタグを確認し、番号を用紙に書いた。手続き完了だ。
スイも北門から出て、もうとっくに姿は見えなくなっていたが、メノウ、そして尾行が通ったはずの街道を途中まで進んだ。そこからイシスへの街道に入ると、少し速度を上げた。
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