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ばたんとドアを開けると、妹の声がした。
「お兄ちゃん!」
妹の肩をがっしりつかんでいた母が振り返った。
「母さん?」
しかし、様子が変だ。目に光がなく、虚ろで言葉を発さない。
「母さん、だよね?」
何となく状況を察しながらもそれを否定するように震える声で聞いてみる。しかし、母はウィンターの問いを無視して妹の首筋を狙った。
まずい。母はすでに誰かに噛まれてヴァンパイアになってしまっている。すぐに殺さないと妹もヴァンパイアになってしまう。
ウィンターは護身用に持っていた短剣に手をかけたが、迷いが生じた。
母親だぞ。母親を手にかけるのか。
そのときだった。
「やめろ!」
弟が閃光を放った。
しかし、それは効かなかったようで、母は何もなかったかのように妹の首筋に噛みついた。鈍い音がしたのはその一瞬後だった。
「おにい……ちゃん」
ウィンターの手にした短剣は母だったヴァンパイアの胸を真っ直ぐに貫いていた。
だが、一瞬遅かった。
妹はすぐに意識をなくして倒れた。脈はなかった。
「お兄ちゃん?」
不安よりも恐怖に満ちた顔で弟が聞いた。ウィンターは首を横に振った。
「そんな……嘘だよね? 嘘だよね……」
消えそうな声でつぶやくと大声で泣き出した。ウィンターも泣きたかったが、声さえ出なかった。弟が閃光を放ったあのタイミングで迷わずに自分が短剣を刺していれば、妹は助かったのだ。
そのとき、ドアが開いた。ヴァンパイアだ。
出口をふさがれ逃げ場がない。ウィンターの魔法ならこちらに来ることを阻むことくらいはできるかもしれないが、倒せないかぎりそれは時間稼ぎにしかならない。それでも、他に選択肢がなくて、取りあえず放心状態になってしまっている弟を抱きしめて閃光を放つ。
「よくやった」
少し後退したヴァンパイアは鈍い音とともにばっさりと倒れて消滅した。その後ろに剣を手にした男が一人立っていた。
次回更新予定日:2018/01/06
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「お兄ちゃん!」
妹の肩をがっしりつかんでいた母が振り返った。
「母さん?」
しかし、様子が変だ。目に光がなく、虚ろで言葉を発さない。
「母さん、だよね?」
何となく状況を察しながらもそれを否定するように震える声で聞いてみる。しかし、母はウィンターの問いを無視して妹の首筋を狙った。
まずい。母はすでに誰かに噛まれてヴァンパイアになってしまっている。すぐに殺さないと妹もヴァンパイアになってしまう。
ウィンターは護身用に持っていた短剣に手をかけたが、迷いが生じた。
母親だぞ。母親を手にかけるのか。
そのときだった。
「やめろ!」
弟が閃光を放った。
しかし、それは効かなかったようで、母は何もなかったかのように妹の首筋に噛みついた。鈍い音がしたのはその一瞬後だった。
「おにい……ちゃん」
ウィンターの手にした短剣は母だったヴァンパイアの胸を真っ直ぐに貫いていた。
だが、一瞬遅かった。
妹はすぐに意識をなくして倒れた。脈はなかった。
「お兄ちゃん?」
不安よりも恐怖に満ちた顔で弟が聞いた。ウィンターは首を横に振った。
「そんな……嘘だよね? 嘘だよね……」
消えそうな声でつぶやくと大声で泣き出した。ウィンターも泣きたかったが、声さえ出なかった。弟が閃光を放ったあのタイミングで迷わずに自分が短剣を刺していれば、妹は助かったのだ。
そのとき、ドアが開いた。ヴァンパイアだ。
出口をふさがれ逃げ場がない。ウィンターの魔法ならこちらに来ることを阻むことくらいはできるかもしれないが、倒せないかぎりそれは時間稼ぎにしかならない。それでも、他に選択肢がなくて、取りあえず放心状態になってしまっている弟を抱きしめて閃光を放つ。
「よくやった」
少し後退したヴァンパイアは鈍い音とともにばっさりと倒れて消滅した。その後ろに剣を手にした男が一人立っていた。
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