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「上級、ヴァンパイアが……」
〈追跡者〉は跡形もなく消滅した。あんなに強かった上級ヴァンパイアがヴィリジアンにコアを傷つけられただけでその存在さえ絶たれた。
まだ実感が湧かなかった。しばらくこの場所に留まってこの状況をはっきりと認識したかった。だが、まだやるべきことが残っていた。グレンはエストルの方に歩いていった。
「陛下を探しに行こう」
グレンはエストルの前に屈み込んでいたずらっぽく尋ねる。
「走れる?」
しかし、エストルは真剣な表情で返した。
「お前こそそんな体で大丈夫なのか」
「分からない。でも、行かなくちゃ」
グレンはエストルの体を治癒した。〈追跡者〉による魔術の影響でぐったりしていた体がかなり楽になった。
「お前の体も魔法で治せればいいのだが」
「残念だけど、拒絶反応自体は治せるような性質のものじゃないから。どうするかは後で考える」
毅然と言い放つと、グレンはエストルの手を取った。
「行こう」
エストルは力強くうなずき、勢いよく床を蹴ってグレンの後から走っていった。
セレストは謁見室の玉座にいつもどおり座っていた。横には少女が一人、控えていた。
「〈追跡者〉の気配が消えたよ」
〈告知者〉だった。
「どういうことだ?」
セレストは眉をひそめる。
「消滅したっていうこと」
「〈追跡者〉を失ったということか?」
「そうだよ。ソードも、〈追跡者〉も、ヴィリジアンの確保に失敗したってことだね。もうすぐここに来るよ」
〈告知者〉はグレンたちの行動を予測していた。
「どうする?」
セレストは少女に尋ねた。
「二人の出方を見てから決めようかな」
「任せた」
セレストはそう言って肩の力を抜こうとした。そのとき、扉がばたんと開いた。
次回更新予定日:2017/01/07
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