魔珠 第10章 結界の向こう(6) 上級ヴァンパイアの血 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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〈追跡者〉の強さはその圧倒的な素速さだ。先ほどのように一振りでは振り払えないようにより重い攻撃力の魔法を最大限のスピードで連続して繰り出した。だが、グレンは全く怯む様子なく、そのスピードについてきて、完璧に全ての攻撃をヴィリジアンに吸収させた。
「速い……」
 横で見ていたエストルが息を呑む。そのときだった。グレンが胸を押さえて悶えだした。
「まだ私の血が完全に受け入れられていないようだな」
 すぐに先ほど吸血した血に対する拒絶反応だと察し、〈追跡者〉はその姿を面白がるように眺めた。そして、眺めながら手だけを素速く横に動かして一撃放った。攻撃はエストル目がけて真っ直ぐ飛んでいった。だが、その攻撃はエストルには当たらなかった。息も絶え絶えのグレンが前に突き出したヴィリジアンに吸収された。グレンは軽く突き飛ばされ、エストルにぶつかった。エストルは後ろからグレンの体を抱き留めた。苦しそうな呼吸が全身を通して伝わってきてエストルは動けなくなった。痛々しくてかけてやる言葉も出ない。
「防いだか。エストルを失い、狂う夢が現実になる絶好の機会だったと思ったのだが」
 グレンは呻き声しか返せなかった。このままでは戦えない。苦痛を是が非でも封じ込める必要がある。自分の体の状態が分からなくなるのは怖かったが、グレンは苦痛の感覚を遮断した。
「グレン……」
 すっと苦しそうだった表情が退いていくのを見て、エストルはすぐにグレンのしたことを理解した。
 もういい。やめてくれ。
 今度こそ声に出して言いたくなるのを必死で堪える。
 グレンは立ち上がって〈追跡者〉にヴィリジアンで襲いかかる。〈追跡者〉は魔術で光の剣を作り出してそれでグレンの一撃を受け止めた。この狭い空間では攻撃魔法よりも剣の方が確実に危険なく相手を仕留められると判断したらしい。素速さは相変わらずなので、攻撃手段が剣に変わったからといって手強い相手であることには変わりないのだが。
 二人は交差したまま動きの止まった剣を離し、再び交えた。素速く繰り出される〈追跡者〉の攻撃をグレンは光の弧を描きながら正確にはねのける。
「私の血を取り込んでまた強くなったようだな」
 グレンもそれは感じていた。体が不思議なくらい軽い。〈追跡者〉のスピードに全く後れを取る気がしない。それどころかほんの一瞬の隙さえ見つければ、自分の方から仕掛けているような気がした。グレンはそのタイミングを剣を裁きながらじっと待った。必ず来る。
 来た。
 少し甘い一撃が来た瞬間を捉えて、力いっぱい剣を払いのける。〈追跡者〉がバランスを崩した一瞬の隙を突き、グレンはヴィリジアンを真っ直ぐ〈追跡者〉の胸に刺した。〈追跡者〉は緑色の光に包まれた。光は少し膨張して小さくなっていき、最後には消滅した。ヴィリジアンの剣の先には黒ずんだカーマナイトの結晶が刺さっていた。上級ヴァンパイアのコアであったものだ。ヴィリジアンの刺さった場所のひびから亀裂が入り、カーマナイトが砕け散った。

次回更新予定日:2016/12/31

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