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「それでソードのことをあんなに信用していたんだな」
「信用は……全面的にしていたわけじゃないと思う。けど、頼れる人が、ソードしかいなかったから」
グレンは寂しそうな顔をした。
「上級ヴァンパイアに吸血されたけど、命も意識も残った。しかも人では絶対に得られないような力を手に入れた。桁外れの強さを手に入れた。でも、生血を吸わないといけない体になった。多分体を維持するために必要なんだと思う。そんな僕にソードは自分の血を吸わせてくれたんだ」
それはグレンを信用させるため、ソードがヴァンパイアに加担していないように見せかけるための行動だったのだろうと今は思う。グレンは騙して利用できるなら、利用する価値が充分ある人物だった。また、ヴィリジアンの瞳を持つ者として手元に置いておかなければ危険でもあった。
「それにしても、無茶をしてくれる」
エストルは苦笑した。
「上級ヴァンパイアの血を吸うとは」
「エストルが教えてくれるまでヴィリジアンを使うなんて考え浮かばなかったよ。それに、怖くなかったの?」
「何が?」
「ヴィリジアンで回復できるにしても一度はヴァンパイアになるんだよ」
「あの状況でそんなこと考えていられるか」
グレンが苦しんでいるのに何もしないで見ていられるわけがない。
「必要ならばいくらでも私の血を吸えばいい。これからも」
エストルもこの力がまだ必要だということを理解してくれている。本当は認めたくないだろうけど。
「何回でもヴィリジアンに斬られてやる」
不敵な笑みで言ってのける。
「ありがとう、エストル」
グレンは穏やかに微笑んだ。
「僕もいつかヴィリジアンの力で人間に戻ろうとは思っている。ヴァンパイアの力が、必要なくなったら」
エストルもうなずいた。その日をつかみ取ってみせる。この手で。
「ところで」
グレンはずっと疑問に思っていたことを口にした。
「どうして上級ヴァンパイアはエストルがヴィリジアンやウィンターたちのこと知ってるってわかったんだろう」
「それは」
エストルは一息入れて答えた。
「クレッチの記憶をのぞいたからだ」
「なんで、クレッチ?」
クレッチはグレンの部下だ。なぜそんなことを知っているのか。訳が分からなくなってグレンは聞く。
「グレン、お前に一つ謝らなければならないことがある。お前に黙って我々はクレッチとデュランにヴァンパイアの情報収集と、クレサックとの情報交換の役割を頼んでいたんだ」
「全然、気がつかなかった」
「私の部屋と、兵舎のクレッチとデュランの部屋に直接魔法陣を置いて行き来してもらっていたからな。無理もない」
エストルは少し笑った。
「すまないな。お前が一人で行動をすることが多いのをいいことに」
それを聞いてグレンは苦笑した。だが、確かにクレッチとデュランは適任だった。二人ともクレサックが信頼してグレンの直属としてくれた部下だった。実力も申し分ない。
「会議にはクレサックたちも来る。それまでとりあえず休め。出席するかどうかは時間になってから考えればいい。席を外そうか?」
エストルは立ち上がろうとしたが、グレンはエストルの手を握って引き留めた。
「ううん。良かったら、横にいて。昔の話でも何でもいい。エストルともって話がしたい」
今このときを逃すと、しばらくゆっくり二人で話ができないような気がした。それにお互い話さないでいたことを全てさらけ出してしまった今、何のわだかまりもなく話ができる。その時間を楽しみたいとグレンは心から思った。
次回更新予定日:2017/02/04
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「信用は……全面的にしていたわけじゃないと思う。けど、頼れる人が、ソードしかいなかったから」
グレンは寂しそうな顔をした。
「上級ヴァンパイアに吸血されたけど、命も意識も残った。しかも人では絶対に得られないような力を手に入れた。桁外れの強さを手に入れた。でも、生血を吸わないといけない体になった。多分体を維持するために必要なんだと思う。そんな僕にソードは自分の血を吸わせてくれたんだ」
それはグレンを信用させるため、ソードがヴァンパイアに加担していないように見せかけるための行動だったのだろうと今は思う。グレンは騙して利用できるなら、利用する価値が充分ある人物だった。また、ヴィリジアンの瞳を持つ者として手元に置いておかなければ危険でもあった。
「それにしても、無茶をしてくれる」
エストルは苦笑した。
「上級ヴァンパイアの血を吸うとは」
「エストルが教えてくれるまでヴィリジアンを使うなんて考え浮かばなかったよ。それに、怖くなかったの?」
「何が?」
「ヴィリジアンで回復できるにしても一度はヴァンパイアになるんだよ」
「あの状況でそんなこと考えていられるか」
グレンが苦しんでいるのに何もしないで見ていられるわけがない。
「必要ならばいくらでも私の血を吸えばいい。これからも」
エストルもこの力がまだ必要だということを理解してくれている。本当は認めたくないだろうけど。
「何回でもヴィリジアンに斬られてやる」
不敵な笑みで言ってのける。
「ありがとう、エストル」
グレンは穏やかに微笑んだ。
「僕もいつかヴィリジアンの力で人間に戻ろうとは思っている。ヴァンパイアの力が、必要なくなったら」
エストルもうなずいた。その日をつかみ取ってみせる。この手で。
「ところで」
グレンはずっと疑問に思っていたことを口にした。
「どうして上級ヴァンパイアはエストルがヴィリジアンやウィンターたちのこと知ってるってわかったんだろう」
「それは」
エストルは一息入れて答えた。
「クレッチの記憶をのぞいたからだ」
「なんで、クレッチ?」
クレッチはグレンの部下だ。なぜそんなことを知っているのか。訳が分からなくなってグレンは聞く。
「グレン、お前に一つ謝らなければならないことがある。お前に黙って我々はクレッチとデュランにヴァンパイアの情報収集と、クレサックとの情報交換の役割を頼んでいたんだ」
「全然、気がつかなかった」
「私の部屋と、兵舎のクレッチとデュランの部屋に直接魔法陣を置いて行き来してもらっていたからな。無理もない」
エストルは少し笑った。
「すまないな。お前が一人で行動をすることが多いのをいいことに」
それを聞いてグレンは苦笑した。だが、確かにクレッチとデュランは適任だった。二人ともクレサックが信頼してグレンの直属としてくれた部下だった。実力も申し分ない。
「会議にはクレサックたちも来る。それまでとりあえず休め。出席するかどうかは時間になってから考えればいい。席を外そうか?」
エストルは立ち上がろうとしたが、グレンはエストルの手を握って引き留めた。
「ううん。良かったら、横にいて。昔の話でも何でもいい。エストルともって話がしたい」
今このときを逃すと、しばらくゆっくり二人で話ができないような気がした。それにお互い話さないでいたことを全てさらけ出してしまった今、何のわだかまりもなく話ができる。その時間を楽しみたいとグレンは心から思った。
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