魔珠 第9章 スア(10) 待機 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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「クレッチ、デュラン」
 よく通る声で呼ばれて二人は振り返る。
「待たせたわね」
 ソフィアだった。リンとルイを従えて、いつものしゃきっとした姿勢で立っていた。
「話は聞いたわ。どう?」
 結界を破壊しようと魔力を送り続けていた兵士たちの様子を見ながらソフィアは尋ねた。
「駄目です。びくともしません」
 クレッチが答えた。
「力を貸して」
 クレッチとデュランは頷いて五人横一列に並んだ。結界に魔力を送っていた兵士たちは、五人に譲るようにその場所から離れた。
「行くわよ」
 五人で一斉に魔力を送った。だが、結界は全く乱れず、ただ三人で魔力を送ったときよりも大きな爆発が起こって、五人が四方八方に飛ばされただけだった。
「どうすればいいの」
 ソフィアは倒れた姿勢のまま見えない結界をにらみつけた。そのまま状況を冷静に分析してみる。
「もう結界が張られてから何時間も経っているのよね」
 他の四人も否定しなかった。
「もし、例えば相手の狙いが陛下に危害を加えることだとしたら、すぐに用を済ませて結界を解くと思うの。結界が何時間も解けていないということは、多分陛下と何か交渉しているか、あるいは何かの目的を果たすため一時的に陛下の身柄を拘束しているか、いずれにしてもこの結界がある間は陛下に危害が加わることはないんじゃないかしら」
「確かに」
「このびくともしない結界に魔力をつぎ込むよりも温存しておいて結界がなくなったときにすぐに突入して、何かあったら使えるように準備しておいた方がいいような気がする」
「賛成ですね」
 クレッチは言った。狙いはセレストではない。エストルの記憶だ。エストルの記憶から情報を引き出すことが敵の狙いだ。それがまだ引き出せていないというのだろうか。それとも引き出した上でエストルの動きを封じているのだろうか。
「だったら、準備にかかりましょう。城内に今いる兵士だけで数は充分ね。それ以外は、これまでどおり城の周辺を警備するよう指示して」
「了解です」
 四人は手分けしてソフィアの指示を伝えに行った。

次回更新予定日:2016/11/19

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