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「幻覚を、見せられた」
「どんな?」
「すごく、怖い」
鮮明な映像が脳裏をかすめる。グレンは手で顔を覆った。絶叫しそうになったそのとき、肩に手がかかった。
「よほど怖かったのだな」
優しく声をかけられて、グレンは現実に戻る。
「先ほどの夢にも出てきたのではないか?」
グレンは戻ってきそうな残像を意識の奥に追いやりながら頷いた。
「助けてやりたいが、こればかりは。記憶を封じるしか方法がない」
「それは困る。それに幻覚は僕が潜在的に恐れていたことが投影されただけだから、幻覚の記憶を封じてもそのイメージはなくならない」
「そうだな。<追跡者>の力で恐ろしい幻覚を見たという情報は、記憶から抹消しない方がいい。次会ったときにどのような攻撃パターンがあるか覚えておいた方が有利だ」
それに、<追跡者>はその幻覚を現実にすると言った。忘れてしまってはそれを阻止しようと試みることさえできない。
「幻覚の内容は話さないのだな」
どきっとする。
「いや。いつものお前なら自分からそこまで話すような気がしてな」
「思い出したくないんだ」
事実だ。少しでも思い出せば、そのイメージが大きく膨らみ、リアルな感覚になる。だが、それ以上に幻覚の内容を他者に話すことはできなかった。自分がヴァンパイアであることを他者に知られるわけにはいかなかった。
「そうだな。少し魔力を分けておこう。回復の助けになるだろう」
ウィンターはグレンの手を握った。優しい光がふんわりと現れ、二人の手を覆う。
「ありがとう、ウィンター」
やっと安心した顔になってグレンは言った。
「歩けるようになったら麓に戻ろう」
「うん」
グレンは目を閉じた。何だかいろいろなところが疲れているような気がした。
夜、全ての公務が終わって自室に戻ると、客がいた。
「ご機嫌いかが、陛下?」
セレストは暗闇にぼうっと浮かび上がった少女の姿を見つけ、そちらに歩いて行った。
「最近またよく頭痛がする」
少女はくすっと笑った。
「それはいけないね」
少女はセレストの額に人差し指を当てる。少女の金色の瞳が輝き、指からは不気味な光が放たれる。セレストは目を閉じた。
光が消えると、セレストは聞いた。
「で、どうだった?」
「駄目みたい。やっぱり要塞を落とすには壁から壊していかないと」
「そうか」
「<002>は例えばグレンの部下なら何か知っているんじゃないかって言うんだけど」
セレストは少し考え込むような素振りを見せた。
「最近グレンは単独行動が多いと聞いている。だが、確かに何か話を聞いている可能性はあるな」
「面白そうだし、とりあえずやってもらおうかな。ねえ、グレンの部下のことはあの人に聞けば分かるよね?」
無邪気な笑顔で少女は聞く。
「そうだな。直接聞いてみればいい」
少女は一礼して消える。セレストは何事もなかったかのように燭台に灯を点した。
次回更新予定日:2016/03/26
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「どんな?」
「すごく、怖い」
鮮明な映像が脳裏をかすめる。グレンは手で顔を覆った。絶叫しそうになったそのとき、肩に手がかかった。
「よほど怖かったのだな」
優しく声をかけられて、グレンは現実に戻る。
「先ほどの夢にも出てきたのではないか?」
グレンは戻ってきそうな残像を意識の奥に追いやりながら頷いた。
「助けてやりたいが、こればかりは。記憶を封じるしか方法がない」
「それは困る。それに幻覚は僕が潜在的に恐れていたことが投影されただけだから、幻覚の記憶を封じてもそのイメージはなくならない」
「そうだな。<追跡者>の力で恐ろしい幻覚を見たという情報は、記憶から抹消しない方がいい。次会ったときにどのような攻撃パターンがあるか覚えておいた方が有利だ」
それに、<追跡者>はその幻覚を現実にすると言った。忘れてしまってはそれを阻止しようと試みることさえできない。
「幻覚の内容は話さないのだな」
どきっとする。
「いや。いつものお前なら自分からそこまで話すような気がしてな」
「思い出したくないんだ」
事実だ。少しでも思い出せば、そのイメージが大きく膨らみ、リアルな感覚になる。だが、それ以上に幻覚の内容を他者に話すことはできなかった。自分がヴァンパイアであることを他者に知られるわけにはいかなかった。
「そうだな。少し魔力を分けておこう。回復の助けになるだろう」
ウィンターはグレンの手を握った。優しい光がふんわりと現れ、二人の手を覆う。
「ありがとう、ウィンター」
やっと安心した顔になってグレンは言った。
「歩けるようになったら麓に戻ろう」
「うん」
グレンは目を閉じた。何だかいろいろなところが疲れているような気がした。
夜、全ての公務が終わって自室に戻ると、客がいた。
「ご機嫌いかが、陛下?」
セレストは暗闇にぼうっと浮かび上がった少女の姿を見つけ、そちらに歩いて行った。
「最近またよく頭痛がする」
少女はくすっと笑った。
「それはいけないね」
少女はセレストの額に人差し指を当てる。少女の金色の瞳が輝き、指からは不気味な光が放たれる。セレストは目を閉じた。
光が消えると、セレストは聞いた。
「で、どうだった?」
「駄目みたい。やっぱり要塞を落とすには壁から壊していかないと」
「そうか」
「<002>は例えばグレンの部下なら何か知っているんじゃないかって言うんだけど」
セレストは少し考え込むような素振りを見せた。
「最近グレンは単独行動が多いと聞いている。だが、確かに何か話を聞いている可能性はあるな」
「面白そうだし、とりあえずやってもらおうかな。ねえ、グレンの部下のことはあの人に聞けば分かるよね?」
無邪気な笑顔で少女は聞く。
「そうだな。直接聞いてみればいい」
少女は一礼して消える。セレストは何事もなかったかのように燭台に灯を点した。
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