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以前、上級ヴァンパイアが現れたと聞き、ソードと二人で討伐に行った。
町から少し離れた場所にある墓地は、昔戦争でこの町が壊滅状態になったとき、その犠牲となった人たちが多く眠る場所だった。そこでゾンビが大量に発生したため、二人は墓地を封鎖し、結界を張り、その鎮静化を図った。
「向こうの方でも発生しているのかな」
グレンは広い墓地を敵を斬りながら見渡した。夜なので暗くてよく分からないが、まだかなり遠くまで敷地が続いている感じだ。
「ソード、ここが片づいたら二手に分かれよう」
「分かった」
二人はとっとと辺りにいたゾンビを闇に返すと、それぞれ反対に向かって走り出した。
グレンの考えたとおり、墓地は先まで続いていて、さらに小道の向こうにまた敷地が見えた。結界を広めに張っておいて正解だったと思った。
その小道を走っているときだった。きらりと闇の中に狂気に満ちた黄金の瞳が光る。
「あ、あなたは……?」
グレンは人影より少し先の方まで走って止まる。すると、月明かりがその正体をあぶり出す。
「ほう。これはまた上等な人間が来たものだ」
ヴァンパイア。しかも今まで会ったヴァンパイアと外見も気配も違う。圧倒的な魔力をグレンは感じる。ただ腕を組んで宙に浮いているだけなのに。
「上級ヴァンパイア?」
「フフ。まあそう呼ばれているらしいな。確かにその辺のヴァンパイアとは違うがな」
近くにいるだけでも押しつぶされそうな気。一人ではかなわないのではないだろうか。
「私に何か用か?」
余裕のある笑いでグレンを見る。
勝ち目はあるのか。グレンは考える。なくても逃げられそうにない。少なくともソードが向こうを片づけてこちらに来るまでは何とかしなければならない。
「あなたを……倒す!」
言い放つなり、グレンは斬りかかっていった。ヴァンパイアはその黒いマントを翻しながら素速く交わす。交わすというよりも消えて瞬間移動しているような感じだ。
「は、速い」
グレンがつぶやくと、ヴァンパイアは口元を吊り上げた。
「そんなものか。それでは私を倒すことはできんぞ」
ものすごい勢いでヴァンパイアは閃光を放った。グレンはとっさに避けたつもりだったが、避け切れていなかった。速すぎる。何もかもが想像を絶する。桁違いという言葉がふさわしいか。
「く……っ」
全身の力が急に入らなくなって、その場にくずおれる。手にしていた剣が金属音を立てて大地に放り出される。
「全く張り合いがないな」
ヴァンパイアが手をすっと下から上に上げていくと、グレンの体が宙に浮き上がった。力が入らないので、頭はうなだれている。
「良い獲物だ。美しく魔力の強い青年。最も私に力を与えてくれる獲物」
嬉しそうに微笑すると、ヴァンパイアはグレンの首筋に牙を食い込ませた。
「んっ!」
痛み以上に恐怖で目を閉じる。このままヴァンパイアになってしまうのか、それとも死んでしまうのか。意識は消えてしまうのだろうか。血を吸われ、頭がぼうっとしてくる。
「ああ……」
絶望の溜息が唇からこぼれる。
「グレン!」
遠くで聞き覚えのある声がしたような気がした。ソードか。
「貴様……」
目の前でソードがヴァンパイアに斬りかかる映像がかすむ。
グレンはそのまま意識を失った。
次回更新予定日:2015/06/27
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町から少し離れた場所にある墓地は、昔戦争でこの町が壊滅状態になったとき、その犠牲となった人たちが多く眠る場所だった。そこでゾンビが大量に発生したため、二人は墓地を封鎖し、結界を張り、その鎮静化を図った。
「向こうの方でも発生しているのかな」
グレンは広い墓地を敵を斬りながら見渡した。夜なので暗くてよく分からないが、まだかなり遠くまで敷地が続いている感じだ。
「ソード、ここが片づいたら二手に分かれよう」
「分かった」
二人はとっとと辺りにいたゾンビを闇に返すと、それぞれ反対に向かって走り出した。
グレンの考えたとおり、墓地は先まで続いていて、さらに小道の向こうにまた敷地が見えた。結界を広めに張っておいて正解だったと思った。
その小道を走っているときだった。きらりと闇の中に狂気に満ちた黄金の瞳が光る。
「あ、あなたは……?」
グレンは人影より少し先の方まで走って止まる。すると、月明かりがその正体をあぶり出す。
「ほう。これはまた上等な人間が来たものだ」
ヴァンパイア。しかも今まで会ったヴァンパイアと外見も気配も違う。圧倒的な魔力をグレンは感じる。ただ腕を組んで宙に浮いているだけなのに。
「上級ヴァンパイア?」
「フフ。まあそう呼ばれているらしいな。確かにその辺のヴァンパイアとは違うがな」
近くにいるだけでも押しつぶされそうな気。一人ではかなわないのではないだろうか。
「私に何か用か?」
余裕のある笑いでグレンを見る。
勝ち目はあるのか。グレンは考える。なくても逃げられそうにない。少なくともソードが向こうを片づけてこちらに来るまでは何とかしなければならない。
「あなたを……倒す!」
言い放つなり、グレンは斬りかかっていった。ヴァンパイアはその黒いマントを翻しながら素速く交わす。交わすというよりも消えて瞬間移動しているような感じだ。
「は、速い」
グレンがつぶやくと、ヴァンパイアは口元を吊り上げた。
「そんなものか。それでは私を倒すことはできんぞ」
ものすごい勢いでヴァンパイアは閃光を放った。グレンはとっさに避けたつもりだったが、避け切れていなかった。速すぎる。何もかもが想像を絶する。桁違いという言葉がふさわしいか。
「く……っ」
全身の力が急に入らなくなって、その場にくずおれる。手にしていた剣が金属音を立てて大地に放り出される。
「全く張り合いがないな」
ヴァンパイアが手をすっと下から上に上げていくと、グレンの体が宙に浮き上がった。力が入らないので、頭はうなだれている。
「良い獲物だ。美しく魔力の強い青年。最も私に力を与えてくれる獲物」
嬉しそうに微笑すると、ヴァンパイアはグレンの首筋に牙を食い込ませた。
「んっ!」
痛み以上に恐怖で目を閉じる。このままヴァンパイアになってしまうのか、それとも死んでしまうのか。意識は消えてしまうのだろうか。血を吸われ、頭がぼうっとしてくる。
「ああ……」
絶望の溜息が唇からこぼれる。
「グレン!」
遠くで聞き覚えのある声がしたような気がした。ソードか。
「貴様……」
目の前でソードがヴァンパイアに斬りかかる映像がかすむ。
グレンはそのまま意識を失った。
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