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「すごいね、スイ」
自由になった両手を振りながらメノウは言った。
「父に勧められて練習した」
メノウに縄を解かれながらスイが笑う。本当に使うことがあるとは。
「さて」
体が完全に自由になったスイは、周りの箱を物色し始めた。
「この瓶ならいいかな」
少し大きめの薬品の瓶だ。調合に使う魔法水の瓶で、これだけでは何の効力も発揮しないただの液体である。
スイはドアの方の壁に体を接触させて聞き耳を立てた。
「これで無視されたら火薬を調合するはめになるのだが」
不敵な笑いを浮かべたスイは美しくも恐ろしい。やる気だ。メノウも疲れた体に気合いを入れて心の準備をする。
何分か耳を澄ましていると、足音が近づいてきた。いちばん近くなったと思ったところでドアの反対側に走り、用意していた瓶を思い切りドアに投げつける。瓶は派手な音を立てて割れた。
「何事だ!」
スイが思っていたとおり、巡回の兵士が駆けつけてきてドアを開けた。ドア口にいたスイが兵士をすさまじい力で室内に引っ張り、腹に拳をめり込ませた。兵士は気を失ってその場に倒れた。
「鍵を開けるのは面倒だからな」
スイは兵士の腰から鍵の束を拝借した。
「目、覚まさないかな?」
メノウが心配そうに兵士の顔をのぞき込む。
「しばらくは大丈夫だと思うけど。念のため縛って鍵をかけて閉じ込めておくか」
ものの何秒かで手際よく兵士の手足を縛ると、スイはメノウとドアを少し開け、物音がしないか確かめ、廊下を見回す。誰もいない。
「向かいの部屋だよ」
「確かに広そうな部屋だ」
スイはドアを探し、鍵穴の形を確認する。鍵束から合いそうな鍵を見つける。
「これかな?」
鍵を回すと、ドアが開いた。
「これは」
ドアを閉めて部屋の中央を見る。魔法陣の真ん中に水晶玉ほどの大きさの魔珠が浮いていた。複数の青い光が短く切ったリボンのように魔珠の中を舞っていた。息を呑むほど美しい物体。だが、これこそが多くの人間の命を奪うことのできる魔術兵器に他ならない。
次回更新予定日:2019/06/29
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「父に勧められて練習した」
メノウに縄を解かれながらスイが笑う。本当に使うことがあるとは。
「さて」
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「この瓶ならいいかな」
少し大きめの薬品の瓶だ。調合に使う魔法水の瓶で、これだけでは何の効力も発揮しないただの液体である。
スイはドアの方の壁に体を接触させて聞き耳を立てた。
「これで無視されたら火薬を調合するはめになるのだが」
不敵な笑いを浮かべたスイは美しくも恐ろしい。やる気だ。メノウも疲れた体に気合いを入れて心の準備をする。
何分か耳を澄ましていると、足音が近づいてきた。いちばん近くなったと思ったところでドアの反対側に走り、用意していた瓶を思い切りドアに投げつける。瓶は派手な音を立てて割れた。
「何事だ!」
スイが思っていたとおり、巡回の兵士が駆けつけてきてドアを開けた。ドア口にいたスイが兵士をすさまじい力で室内に引っ張り、腹に拳をめり込ませた。兵士は気を失ってその場に倒れた。
「鍵を開けるのは面倒だからな」
スイは兵士の腰から鍵の束を拝借した。
「目、覚まさないかな?」
メノウが心配そうに兵士の顔をのぞき込む。
「しばらくは大丈夫だと思うけど。念のため縛って鍵をかけて閉じ込めておくか」
ものの何秒かで手際よく兵士の手足を縛ると、スイはメノウとドアを少し開け、物音がしないか確かめ、廊下を見回す。誰もいない。
「向かいの部屋だよ」
「確かに広そうな部屋だ」
スイはドアを探し、鍵穴の形を確認する。鍵束から合いそうな鍵を見つける。
「これかな?」
鍵を回すと、ドアが開いた。
「これは」
ドアを閉めて部屋の中央を見る。魔法陣の真ん中に水晶玉ほどの大きさの魔珠が浮いていた。複数の青い光が短く切ったリボンのように魔珠の中を舞っていた。息を呑むほど美しい物体。だが、これこそが多くの人間の命を奪うことのできる魔術兵器に他ならない。
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