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「その後、カップを片づけたのですが、どうしてもスイ様のご様子が気になって」
二階に上がって右側の廊下に出ると、スイが壁を支えにしながらふらふらと歩いていた。肩を激しく上下させながら、危なっかしい足取りで歩を進めている。シェリスは足音を立てずにスイの横に駆け寄ってなるべく耳元に近づくように顔を寄せ、小声で囁いた。
「スイ様?」
左手で右胸を押さえている。呼吸は荒く、苦しそうだ。
「お部屋まで肩をお貸しします」
「ありがとう」
消え入りそうな声で礼を言って、左手をシェリスの肩に伸ばす。シェリスはスイを脇から抱えた。部屋まではもうそんなに距離はなかった。ドアを開けると、シェリスはスイをベッドまで運んだ。
スイはそのまま目を閉じた。呼吸は少し落ち着いたようだったが、名前を呼んでも反応がなかった。
かすかに音がしてシェリスは目を覚ました。
「スイ様?」
「シェリス……」
うっすらと目を開けたスイは、か細い声で答えて手を伸ばした。シェリスはその手をつかんだ。まだ力がなかった。
「もう……朝か?」
シェリスは時計を見た。
「五時前でございます」
夏だったので、日はもう昇っていた。
「シェリス」
「はい」
シェリスはじっとスイを見つめて次の言葉を待った。できることがあるならば、力になりたかった。昨夜もそう思って椅子を借りてスイの横で仮眠を取った。目が覚めたらすぐに気づけるように。しかし、スイの要望はシェリスが考えていたような類いのものではなかった。
「昨夜のことは誰にも話さないで欲しい」
次回更新予定日:2019/01/26
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