魔珠 第4章 アウル(3) 先を越す者 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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グレンは重い足取りのままアウルを目指した。
 この剣でまた何の罪もない人を斬るのか。
 空はどんよりと曇っている。空気は何となく淀んできているような気がする。嫌な空気だ。ヴァンパイア化した村から漂うこの特有の空気。
「あれか」
 村が見えてくる。通りをふらふらとヴァンパイアたちが彷徨っている。
「失礼!」
 後から人影がグレンを追い抜いてゆく。
「お、おい!」
 戸惑いで一瞬足がすくんだせいで出遅れた。走って追いかけようとしたが、相手は木に飛び乗ってジャンプしたり、再び血を駆け出したり、とても普通に追いかけられるようなスピードと身のこなしではなかった。後ろ姿を見ると、ポニーテールの若い女性のようだった。とにかく無我夢中で後を追った。
「待って!」
 そのまま村に入り、速度を落とさず、鞘から剣を抜き、ヴァンパイアたちをばっさばっさと斬ってゆく。やっとのことで追いついたのは、女性が通りにいたヴァンパイアをあらかた斬り尽くした後だった。
「こんなところで何してるんですか!」
 さすがに少し息を弾ませながらグレンは尋ねる。よく見ると、まだグレンよりも若い女性だった。そして、まずその瞳に吸い込まれる。自分と同じ、不思議な青緑の色の瞳。
「見てのとおり。ヴァンパイアを斬っているの」
 そのときだった。横にあった建物の扉が急に開き、中からヴァンパイアが出てきたのだ。
「危ない!」
 グレンが斬りつけようとすると、
「キャー、待って!」
 と女性に先を越される。
「その剣で斬っちゃだめ!」
「何?」
「いいから、その剣はしまって」
 勢いに押されてグレンは言うとおりにする。女性は村中を捜索しながら見つけたヴァンパイアを次々と斬っていった。ヴァンパイアたちは声もなく、気を失って目を閉ざし、その場に倒れる。グレンは仕方なく黙ってついていった。

次回更新予定日:2015/10/24

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