魔珠 第7章 リザレス魔術研究所(7) 書庫2 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『魔珠』を連載しています。 前作『ヴィリジアン』も公開しています。
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魔術師と同じ黒いローブの裾を優雅な動作で翻して、スイは書庫の方に向かった。途中、辺りを見回してみたが、いつもと変わった様子もなかった。
 書庫に入った。正面にはずらりと本棚が並んでいる。右手を見た。奥の方に机と椅子がいくつかあり、調べ物をしている魔術師が一人いた。研究所の魔術師だろう。見渡す限り、今のところ他に人はいないようだ。
 スイは目的の文献を探した。ついでに書庫のいちばん奥まで行って窓の外を見た。中庭と、その向こうに研究所に面した通りが見える。スイが先ほどここに来るときに通った道だ。中庭には人は見当たらなかったが、通りには先ほどと同じく、人が何人か行き交っている。
 いつも閲覧するのは大抵魔珠関係の資料なので、どの辺りにあるのかは知っている。その一体からレヴィリンの文献を探す。
 何冊もある図書の中から論文集を見つけて、長くしなやかな指で取り出すページを繰ると、メノウの言っていた論文があった。理論自体は有名なので、他の本にもよく取り上げられていて何度も目にしていたが、オリジナルの論文を読むのはこれが初めてだ。
 本棚の前に立ったまま読み進めていると、扉が開き、閉まる音がした。続いて椅子を動かす音がした。先ほど調べ物をしていた魔術師が立ち上がって、入ってきた人物に一礼したのだろう。スイは顔を上げずに論文を読み続けた。足音がこちらの方に近づいてきても気づかぬ振りをして読み続けた。
「おや。珍しいね。こんなところで会うなんて」
「レヴィリン博士」
 初めて気づいたかのように驚いた表情を作ってみせた。レヴィリンはあまり気にすることもなく、話を始めた。
「調べ物かな?」
「調べ物というか、エネルギー抽出法の復習です」
「勉強熱心だね」
 いかにも人の良さそうな柔らかな笑顔がどれほどレヴィリンの心を動かしたかは分からなかったが、レヴィリンも満足げに頷いてはくれた。
「そうだ。良かったら私の研究室に来ないかね。少しエネルギー抽出法の講義をしよう。ちょうど最新技術も確立されつつあってね。せっかくの機会だから紹介しよう。君からマーラルの兵器についても詳細をぜひ聞きたいしね」
「本当ですか。博士から直々にご指導いただけるなんて。マーラルのことは技術的なことはよく分かりませんが、この目で見たことでしたら」
「充分だ。では、行こうか」
 マーラルの魔術兵器のことは、おそらく御前会議で外務室長であるキリトが報告をしたが、事実を簡潔に述べただけのはずだ。
 それよりも最新技術。

次回更新予定日:2019/11/16

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