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「だから、お願いだから、帰ってくれない?」
「嫌だ」
「へ?」
エストルではありえないような子どものような言い方で返されてグレンは耳を疑う。驚いていると、エストルはグレンの手を握った。すると、ぴきいんと金属音がして体が急に重くなった。
「う……っ」
今まで抑えていた苦痛が急に解放されてグレンの体を襲った。
「エストル……君……」
だが、次の言葉はうめき声になった。
「もう我慢しなくていい。苦しいんだったら思う存分その苦しみを解放すればいい。私はお前が心配だからついていたいだけだ」
グレンは苦しくて顔を上げることさえできなかった。だが、エストルがぎゅっと手を握りしめると、それにすがるようにありったけの力で握り返してきた。苦痛で歯を食い縛ると指が折れそうになるくらい力が入った。しかし、すぐに手の力が抜けた。苦しくて胸を押さえ体を折る。だが、また激痛が来て体を伸ばす。顔を歪めたままドアに倒れ込むが、呼吸をどのようにしたらいいのか分からない。エストルは手を握り直してグレンの表情を観察した。しばらく顔を見ていると、力が一気に抜けたのが分かった。
「よくがんばったな、グレン」
拒絶反応は治まったようだった。先ほどよりもだいぶ時間が短くなっている。それでもグレンはびっしょり汗をかいていた。エストルはタオルを持ってきてグレンの汗と血をふいてやった。
「ありがとう」
かなりの時間差になったが、少し呼吸が整ったところでグレンは礼を言った。先ほどと同じようにエストルからグラスを受け取り、水を飲んだ。
「気がついて、いたんだね」
「ああ」
返ってきたグラスをエストルはテーブルに置いた。
「顔色が一瞬変わった。それにお前が魔術で苦痛を封じたのも分かった。お前の魔力にわずかな動きがあった」
「鋭いね、エストルは」
すると、エストルは少し笑った。
「長年のつき合いの成果だ。お前でなければ分からない」
長年のつき合いがあっても、エストルの鋭さがないと分からない。グレンはそう思ったが、口には出さなかった。
次回更新予定日:2017/06/17
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「嫌だ」
「へ?」
エストルではありえないような子どものような言い方で返されてグレンは耳を疑う。驚いていると、エストルはグレンの手を握った。すると、ぴきいんと金属音がして体が急に重くなった。
「う……っ」
今まで抑えていた苦痛が急に解放されてグレンの体を襲った。
「エストル……君……」
だが、次の言葉はうめき声になった。
「もう我慢しなくていい。苦しいんだったら思う存分その苦しみを解放すればいい。私はお前が心配だからついていたいだけだ」
グレンは苦しくて顔を上げることさえできなかった。だが、エストルがぎゅっと手を握りしめると、それにすがるようにありったけの力で握り返してきた。苦痛で歯を食い縛ると指が折れそうになるくらい力が入った。しかし、すぐに手の力が抜けた。苦しくて胸を押さえ体を折る。だが、また激痛が来て体を伸ばす。顔を歪めたままドアに倒れ込むが、呼吸をどのようにしたらいいのか分からない。エストルは手を握り直してグレンの表情を観察した。しばらく顔を見ていると、力が一気に抜けたのが分かった。
「よくがんばったな、グレン」
拒絶反応は治まったようだった。先ほどよりもだいぶ時間が短くなっている。それでもグレンはびっしょり汗をかいていた。エストルはタオルを持ってきてグレンの汗と血をふいてやった。
「ありがとう」
かなりの時間差になったが、少し呼吸が整ったところでグレンは礼を言った。先ほどと同じようにエストルからグラスを受け取り、水を飲んだ。
「気がついて、いたんだね」
「ああ」
返ってきたグラスをエストルはテーブルに置いた。
「顔色が一瞬変わった。それにお前が魔術で苦痛を封じたのも分かった。お前の魔力にわずかな動きがあった」
「鋭いね、エストルは」
すると、エストルは少し笑った。
「長年のつき合いの成果だ。お前でなければ分からない」
長年のつき合いがあっても、エストルの鋭さがないと分からない。グレンはそう思ったが、口には出さなかった。
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