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「どうやって情報を得たんだろうな。正体がばれそうになっただけで毒を煽ろうとする人間から」
「本人の意志と関係なく自白するような手段を取ったんだろう。例えば、薬とか魔術とか。魔術の方が確実だろうから、おそらく魔術だろうな」
人から情報を引き出すような魔術は高度だが、魔珠の里にはそれに必要な魔力も豊富にあり、それができる魔術師も何人かはいるはずだ。
「それなら、情報は信頼できると考えていいんじゃないか。別に城とか魔術研究所とか重要な施設のマップは、工作部隊の奴なら頭に入っていて当然の情報だろ」
「メノウもそう考えたのだと思う」
「どういうことだ?」
なんだ、その言い方。
不安になってスイの顔をのぞく。すると、スイは顔を上げてキリトの目を真っ直ぐ見た。
「この見取り図は……偽物だ」
「はあ?」
思わず声が裏返った。
「だって、今、魔術で自白させたって言っただろ」
「だから。マーラル軍は最初から捕まったときのことを考えて、魔術に抵抗する手段を講じていたか。あるいは、もっと現実的なのは、このリーシャという工作員には、もう最初からこの作戦に従事させることだけを考えていて、偽りの見取り図を頭に叩き込ませたか」
「万一失敗した場合は、相手を罠にはめてしまえ、か。それにしても用意周到だな」
「里には忍びの者もいる。これだけの計画だ。失敗した場合の対処を考えておくのは当然だが」
「こんな大がかりな罠を張っておくとはねえ……ってなんでお前このマップが偽物だって分かるんだ?」
はっと気づいてキリトが訊く。スイは見取り図を手に取った。
「王の寝室とその周辺の部屋の配置が違う」
「だから、お前なん……」
なんでそんなことを知っているのか、と訊きかけて、キリトは口をつぐんだ。スイがマーラルに交換研修に行ったときのことを思い出したからだ。
リザレスとその周辺諸国では、将来要職に就くことが期待される十五、六歳の学生を他国に一週間ほど研修に行かせ、実際にその国を見て、その国について学ぶという制度を実施していた。スイとキリトも士官学校に入って迎えた最初の夏休みに交換研修に行くことにした。
次回更新予定日:2019/01/05
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「本人の意志と関係なく自白するような手段を取ったんだろう。例えば、薬とか魔術とか。魔術の方が確実だろうから、おそらく魔術だろうな」
人から情報を引き出すような魔術は高度だが、魔珠の里にはそれに必要な魔力も豊富にあり、それができる魔術師も何人かはいるはずだ。
「それなら、情報は信頼できると考えていいんじゃないか。別に城とか魔術研究所とか重要な施設のマップは、工作部隊の奴なら頭に入っていて当然の情報だろ」
「メノウもそう考えたのだと思う」
「どういうことだ?」
なんだ、その言い方。
不安になってスイの顔をのぞく。すると、スイは顔を上げてキリトの目を真っ直ぐ見た。
「この見取り図は……偽物だ」
「はあ?」
思わず声が裏返った。
「だって、今、魔術で自白させたって言っただろ」
「だから。マーラル軍は最初から捕まったときのことを考えて、魔術に抵抗する手段を講じていたか。あるいは、もっと現実的なのは、このリーシャという工作員には、もう最初からこの作戦に従事させることだけを考えていて、偽りの見取り図を頭に叩き込ませたか」
「万一失敗した場合は、相手を罠にはめてしまえ、か。それにしても用意周到だな」
「里には忍びの者もいる。これだけの計画だ。失敗した場合の対処を考えておくのは当然だが」
「こんな大がかりな罠を張っておくとはねえ……ってなんでお前このマップが偽物だって分かるんだ?」
はっと気づいてキリトが訊く。スイは見取り図を手に取った。
「王の寝室とその周辺の部屋の配置が違う」
「だから、お前なん……」
なんでそんなことを知っているのか、と訊きかけて、キリトは口をつぐんだ。スイがマーラルに交換研修に行ったときのことを思い出したからだ。
リザレスとその周辺諸国では、将来要職に就くことが期待される十五、六歳の学生を他国に一週間ほど研修に行かせ、実際にその国を見て、その国について学ぶという制度を実施していた。スイとキリトも士官学校に入って迎えた最初の夏休みに交換研修に行くことにした。
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アレアから帰って半月が過ぎた。
いつものように剣の素振りをして部屋に戻った。机に手紙が届いていた。宛名はスイになっているが、住所などは記されていない。スイは封筒を開けた。やはりメノウからだ。住所が書かれていないということは、忍びの者が直接ここに届けたということだろう。
スイは手紙を一読した。そして、同封されていた二枚の紙を見た。二枚とも見取り図だった。一方は魔術研究所の見取り図、もう一方は王城の見取り図だった。
スイは王城の見取り図を見てあったお声を上げた。
急いで上着を羽織りながらスイは階段を下りた。
「シェリス」
声をかけると、すぐにシェリスが階段の方に歩いてきた。
「急用ができた。キリトの家に行ってくる」
「かしこまりました。気をつけていってらっしゃいませ」
すっと扉を開け、スイを見送る。
スイは早足でキリトの私邸に向かった。
スイはキリトの部屋に案内された。
「なんだ、こんな朝早くから」
迎えたキリトはまだ部屋着で髪もぼさぼさだ。
「悪い。メノウから手紙が来て」
「ああ。尾行者捕まえたときに約束していた、例の情報ってやつ?」
そこまで口にしてキリトははっとなった。眠気が一気に覚める。スイがわざわざ出勤前にここに来たということは。
「何か一刻を争うような情報があったのか?」
訊かれてスイは渋い表情になった。
「もちろん……傍観するという手もあるのだが」
「事情を話してみろ」
続く言葉が出にくそうになっていたスイに助け船を出してみる。スイは少しだけ安堵した表情になり、話を切り出した。
「これが、メノウからの手紙だ」
差し出されたということは読んでも構わないということなのだろう。キリトは手紙を読み始めた。
「尾行者の名前はリーシャ。マーラル軍工作部隊の所属だ」
そろそろ読み終わるだろうと予測してスイが早めに切り出す。
「やはりマーラルは魔術研究所を拡張して兵器を開発していたんだな」
キリトは添えられていた紙の方を確認し始めた。
「城と魔術研究所の見取り図。使うかどうかはともかく。これもなかなか貴重な情報ではある。協力した甲斐はあったな。ところで」
キリトは眉をひそめた。
次回更新予定日:2018/12/29
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いつものように剣の素振りをして部屋に戻った。机に手紙が届いていた。宛名はスイになっているが、住所などは記されていない。スイは封筒を開けた。やはりメノウからだ。住所が書かれていないということは、忍びの者が直接ここに届けたということだろう。
スイは手紙を一読した。そして、同封されていた二枚の紙を見た。二枚とも見取り図だった。一方は魔術研究所の見取り図、もう一方は王城の見取り図だった。
スイは王城の見取り図を見てあったお声を上げた。
急いで上着を羽織りながらスイは階段を下りた。
「シェリス」
声をかけると、すぐにシェリスが階段の方に歩いてきた。
「急用ができた。キリトの家に行ってくる」
「かしこまりました。気をつけていってらっしゃいませ」
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スイは早足でキリトの私邸に向かった。
スイはキリトの部屋に案内された。
「なんだ、こんな朝早くから」
迎えたキリトはまだ部屋着で髪もぼさぼさだ。
「悪い。メノウから手紙が来て」
「ああ。尾行者捕まえたときに約束していた、例の情報ってやつ?」
そこまで口にしてキリトははっとなった。眠気が一気に覚める。スイがわざわざ出勤前にここに来たということは。
「何か一刻を争うような情報があったのか?」
訊かれてスイは渋い表情になった。
「もちろん……傍観するという手もあるのだが」
「事情を話してみろ」
続く言葉が出にくそうになっていたスイに助け船を出してみる。スイは少しだけ安堵した表情になり、話を切り出した。
「これが、メノウからの手紙だ」
差し出されたということは読んでも構わないということなのだろう。キリトは手紙を読み始めた。
「尾行者の名前はリーシャ。マーラル軍工作部隊の所属だ」
そろそろ読み終わるだろうと予測してスイが早めに切り出す。
「やはりマーラルは魔術研究所を拡張して兵器を開発していたんだな」
キリトは添えられていた紙の方を確認し始めた。
「城と魔術研究所の見取り図。使うかどうかはともかく。これもなかなか貴重な情報ではある。協力した甲斐はあったな。ところで」
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