ヴィリジアン 第15章 神殿(1) 崩された平穏 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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ウィンターも不気味なくらい静かな町を歩いていた。
 やはり人の影がない。
 家のドアは開いたままになっていたり、閉じていてもやはり鍵がかかっていない。そして、どの家も中には人がいない。
 ウィンターは半開きになっている家の中に入ってみた。
 誰もいない。テーブルが斜めになっている。椅子がいろいろな方向を向いて倒れている。
 ウィンターは家がヴァンパイアに襲われた日のことを思い出した。

 十歳のときだった。ウィンターは二つ年下の弟と森に木の実を採りに行っていた。母に頼まれたのだ。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
 日が少し傾き始めたのに気づいてウィンターが声をかける。木の実でいっぱいになったかごを弟は持ち上げた。ウィンターはちゃんと持ち上げられたのを確認してからひとまわり大きい自分のかごを持ち上げる。弟は負けず嫌いなので、時々木の実を自分の力で持ち上げられないくらい入れてひっくり返りそうになることがあるのだ。
 村が近づいてきたが、何か様子がおかしい。気配がいつもと違うのだ。
「お兄ちゃん」
 袖をつかむ弟の声で振り返ると、少し距離のある場所に女の人が男の人につかまっていた。親しくしている人ではないが、見覚えはある。男の人の方に生気が感じられない。
「この村に帰っちゃだめ。逃げて!」
 そう叫んだ女の人の首筋に男の人が噛みついた。牙がある。
「お兄ちゃん、これってもしかして……」
 祖父から話を聞いたことがある。この人はヴァンパイアなのではないだろうか。ヴァンパイアは人間を襲い、ヴァンパイアにしてしまう。まさかこんな何もない小さな村にヴァンパイアが来るなんて。
 ウィンターが呆然としていた一瞬の間に弟はかごを置いて駆け出し、村の中に入ってしまった。
「待て」
 中に入ったらそこはヴァンパイアの巣窟になっている可能性が高い。だが、家には母と人見知りの弟が唯一心を許す妹がいる。弟は母と妹を助けに行こうと思ったに違いない。いくら物心ついたときから魔術の修行をしているからといって、八歳の子どもがヴァンパイアから人を守れるはずがない。そもそそ母と妹がまだ無事だという保証もない。そんなことは考えもしなかったのだろう。こうなった以上放っておくわけにもいかない。ウィンターもかごを置いて弟を追いかけた。
 行く手を阻むヴァンパイアもいた。だが、ウィンターが魔法で蹴散らして道を空けさせた。弟は母と妹を助けること以外は考えずにただウィンターの空けた道を真っ直ぐ家に向かって走っていった。

次回更新予定日:2017/12/30

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