ヴィリジアン 第14章 パイヤン(11) 廃墟 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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「疲れが取れたら少しこの辺を見て回ってから僕たちも神殿に向かうよ」
 グレンがエストルの腕にもたれかかったまま口を開いた。吸血する前よりもしっかりした声だ。
「あまり無理はしないでね」
 少し安心したような表情をきゅっと引き締めてソフィアはグレンを気遣う。
「では、行きましょうか」
 リンとルイは短い返事をしてすぐにソフィアの左右についた。
「では、また後で」
 ウィンターはそう言い残してしばらく真っ直ぐ前進して右折した。
 大通りから人の姿が完全に消えた。
 グレンは全身に魔力を行き渡らせ、先ほどの戦闘で負った傷を癒した。
「どうだ、気分は?」
 エストルはグレンに聞いた。
「おかげでだいぶ元気になったよ」
「良かった」
 エストルは笑顔になった。
「エストルは? エストルも戦ったんでしょう? 怪我とかない?」
「ウィンターがすぐに来てくれて、補佐する程度だったから、大した傷はない。もう治した。魔力もそんなに使っていない」
「そうか。良かった」
 グレンも笑うと、首を少し動かして目の前に広がる景色を見た。
「それにしても……まるで廃墟だね。この町」
 エストルも顔を上げて大通りを見た。静かすぎる町。人の気配が全くしない不気味な空気。
「やっぱり、誰もいなくなっちゃったのかな」
 この町の正確な情報がずっとつかめなかったのは、おそらくゲートの封印を解いたときからこの町が封鎖された状態になっていたからだ。町を封鎖し、訪れる者にはもうそこにはすでにないそれまでと同じ風景を見せ、旅人たちはそれまでと同じようにパイヤンでの時間を過ごし、それまでと同じように帰っていった。それがヴァンパイアの創り出した幻想だということにさえ気づかずに。
 現実のパイヤンでは、封印を解かれたゲートからは上級ヴァンパイアが送り込まれ、すぐに神殿、そして町の人を吸血し、ヴァンパイア化した。ヴァンパイア化した人が他の人たちを襲い、町にヴァンパイアが溢れる。町が完全にヴァンパイア化したところで、ヴァンパイア化した人たちを町の外に放ち、他の町のヴァンパイア化に貢献してもらう。町に残ったヴァンパイアはこの様子だと殺したのだろう。

次回更新予定日:2017/12/16

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