ヴィリジアン 第13章 魔術研究所(1) 打ち明けること 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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エストルは優雅な動作でカップを口に運んだ。
「おいしく入っているぞ、グレン」
「ほんと? ありがとう」
「嬉しそうだな」
 グレンの明るい表情を見てウィンターは言った。
「だって、エストルに褒められたんだよ」
 エストルは苦笑した。だが、グレンも自分と同じように思ってくれていることは素直に嬉しいと思った。
「まあ僕のお茶は入れ方がうまいんじゃなくて、旅先で分けてもらったお茶だからおいしいんだけど」
 技術ではとてもエストルにはかなわない。
 エストルは二口目をおいしそうに飲むと、急に真面目な顔になった。
「そういえば、グレン、お前に謝らなければならないことがある」
「謝らなければならないこと?」
 グレンは不思議そうに顔を上げる。エストルはカップをソーサーに置いた。
「会議の前にソフィアたちとクレッチ、デュラン、それからクレサックとシャロン、それにウィンターにあらかじめ事実と城で起こったことの経緯を全て包み隠さず説明した。もっともリネル組にはクレッチから説明をしてもらったが」
 ウィンターたちが城に着いたのは、拒絶反応が治まって休んでいたときのはずなので、つまり、エストルはクレッチに説明を任せて側についていてくれたということだ。
「全て。お前がヴァンパイアだということもだ」
 エストルは真っ直ぐグレンの緑色の瞳を見た。
「お前はヴァンパイアであることをずっとソード以外には口外せず隠してきた。だから、本当は誰にも打ち明けたくなかったのではないかと思った。だが、やはりお前がヴァンパイアであることも含めてこれから作戦の主軸となるこのメンバーには話さなくてはならないと思った」
「君の言うとおりだよ、エストル」
 グレンは力強くうなずいた。
「ずっと、自分でもどうしていいか分からなくて抱え込んできた。でも、今は、打ち明けるべきだと思う。僕がヴァンパイアであり、〈追跡者〉の血を体に取り入れたことは、作戦を立てるときの戦力を計算する上で重要なパラメーターになる」
「部隊長たちには話さなかったんだな」
 ウィンターが指摘すると、グレンは優しい顔になって答えた。
「いらない不安感は植えつけたくなかったから」
「同意見だ。私もそうしただろう」
 エストルが口を挟む。これから行動を共にせずに城の防衛を頼む部隊長や、その部隊長から話を聞かされるかもしれない多くの兵士たちの中には、城の中にヴァンパイアがいるということに不安を覚える者もいるに違いない。噂が一人歩きして一般の住人に広がって誤解を生むような事態になることも避けたい。

次回更新予定日:2017/07/08

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