ヴィリジアン 第12章 王のいない城(6) 拒絶反応 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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「ううん、何でもない」
 これは先ほどと同じ拒絶反応の前触れだ。自室に辿り着くまで持つようにグレンは苦痛を封じながら答えた。
「そうか」
 そう言ってエストルは会議室を出た。入れ替わるように、シャロンがやってくる。
「グレン将軍、これお返しします」
 見ると、グレンがスアで貸した剣だった。
「ありがとうございました」
「少しは役に立ったかな」
「はい。途中、魔物を何体か斬らせていただきました」
 いたずらっぽい表情で答えるシャロンを見ていると、妙な安心感を覚える。
「確かに受け取ったよ」
 にこやかに笑って剣を受け取る。長い間使ってきた剣。やはり手にしっくり来る。
「では、また後ほど」
 シャロンはエストルの真似をして言うと、ソフィアと話をしているクレサックを捕まえて二言三言交わし、部屋を出ていった。
「僕も一回部屋に戻るよ」
「それがいい。私はもう少しここにいる」
 ウィンターがクレサックの方に行くのを見届けて、グレンは二本の剣を持ってそっと部屋を出た。早い足取りで廊下を歩いていく。もう少しで部屋に着く。そう思って角を曲がると、部屋の前に書類を手にしたままのエストルが立っていた。
「どうして、ここに? 執務室に戻ったんじゃなかったの?」
 そう口にした瞬間、何かが込み上げてきた。グレンはとっさに血が逆流してきたのだと察し、口を押さえて吐き出しそうになった血を飲み込んだが、飲み込めきれなかった血が手からぽたぽたと滴り落ちた。
「グレン!」
 エストルは書類を乱暴に床に置き、グレンの腰から鍵を外し、ドアを開けて自分の体ごと中に押し込んだ。ドアを閉めると、グレンは閉めたばかりのドアに寄りかかるようにして座り込み、また吐き出しそうになった血を飲み込んだ。もうそれ以上血は逆流してこなかったが、無理に飲み込んだせいか、少し呼吸が乱れている。
「ありがとう、エストル。もういいよ」
「良くないだろ」
 エストルが一喝すると、グレンは弱々しい笑みを浮かべて言った。
「こんなところ、他の人に見られたくないんだ」
 エストルは押し黙った。

次回更新予定日:2017/06/10

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