ヴィリジアン 第8章 ロソー城(6) 深まる謎 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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「分からない。けど、クレッチの記憶をのぞいたって」
 ソードはしばらく無言のまま考えているようだったが、謁見室の扉の前まで来ると、立ち止まって呟いた。
「最初からクレッチがターゲットだったのか、城の兵士だったら誰でも良かったのか、それともただの戯れだったのか、そもそも他に目的があったのか。全く分からんな」
 扉が目の前で開く。二人は揃った足並みで静かに玉座の方に歩いていった。ぴたっと止まって跪くタイミングにも全くずれがなく美しい。
「急な呼び出しになってすまない。上級ヴァンパイアの出現を受けてエストルと次の任務について相談したのだが」
 セレストはまずソードの方を向いた。
「ソード、アウグスティンにヴァンパイア討伐に向かえ」
「はっ」
「そして、グレン」
 セレストはグレンの緑色の瞳をのぞき込んだ。
「昨夜、森に上級ヴァンパイアが出現したそうだな」
「はい」
 エストルがちゃんと報告してくれているようだ。
「何が狙いか分からないが、森だけでなく城の内部に侵入してくる可能性もなくはない。念のため、しばらく城に残って警備を強化してもらいたい」
 エストルの考えていることが当たっているようであれば、グレンがいない方が安全なような気もしなくもないが、城の内部に潜り込んで何か行動を起こそうとしているというのは十分考えられることである。ソードが推測したように、単に城の内部の状況を知るために一兵士であるクレッチの記憶をのぞいたのが、たまたまグレンの部下だった、という線も捨てきれない。
 話が終わると、二人は謁見室を出た。
「アウグスティンか。今回は遠いね」
 ソードがヴァンパイア討伐を命じられたアウグスティンは、ムーンホルンの南西部に位置する。国土が若干縦長で、城のある王都ロソーが中心よりも北東部に位置することを考えると、かなり距離のある町と言える。
「長旅になりそうだ。しっかり準備しなくては」
 いつもどおりの淡々とした口調でソードが呟く。
「城は頼む」
「うん」
 覇気のない返事のグレンの横顔をソードはちらっと見た。
「不安なのか? いや。不安だろうな」
 実際、上級ヴァンパイアが現れても打つ手がある気がしない。

次回更新予定日:2016/08/06

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