ヴィリジアン 第2章 サルニア(3) 魔獣討伐 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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「なぜ、ウィンターはムーンホルンに?」
「テルウィング王はムーンホルンをも支配しようと魔獣やヴァンパイアをここに送り込んだ。見たくないんだ。もう二度と繰り返したくないんだ。あの、惨事を」
 これまで冷静だったウィンターが急に肩を震わせて、その大きな両手で顔を覆った。
「ウィンター……」
 手首を握りしめ、グレンは優しく声をかける。
「すまない……取り乱した」
 ウィンターは髪をかき上げ、顔を上げた。
「この大陸にはまだ希望がある。それに、テルウィングを救うこともできるかもしれない」
 グレンはウィンターのその言葉に引きつけられた。希望がある?
「良かった明日手を貸そう。魔獣を倒すのだろう?」
「えっ?」
 グレンが驚いて聞き返すと、ウィンターはにやりと笑った。
「それとも」
 少し言葉を句切ってグレンの反応を見る。
「王騎士様にこんなことを申し出るのは失礼かな」
「とんでもないです。でも、ウィンター……」
 あまり危険なことに他の人を巻き込みたくない。だから、部下だって連れてこないのだ。
「私なら心配ない。それに、一度お前の力を見てみたい」
「では、お願いします」
 どうして承諾したのか分からない。だが、ウィンターにはいつも拒否させない何かがある。

 目撃情報を頼りに森の奥に進む。やはり今回も人里から少し離れた場所に棲みついているようだ。
 こちらの気配に気づいたのか、おたけびがした。町の人々が行っていた魔獣に違いない。獅子によく似た容姿をしていると言っていた。聞こえたおたけびはまさしく獅子のそれを彷彿とさせる。
「いた!」
 グレンが確認できたときには、もう魔獣は二人に襲いかかろうとしていた。魔獣はなぜこんなに攻撃的な性格をしているのかとグレンは考えたことがある。だが、ウィンターの言うような戦闘マシーンだとすると、このような振る舞いもごく自然に見えてくる。
「喰らえ!」
 即行で剣を構えると、素速い動きで魔獣に斬りつける。
「金獅子だな」
 ぽつりと言いながら攻撃を交わし、ウィンターはグレンの剣裁きを見た。美しい弧を描く剣は金獅子の動きを確実にとらえ、無駄のない攻め方でその巨体を傷つける。相手が消耗しきったところで、急所を狙って突くと、魔獣は消滅した。
「さすが王騎士様。見事だ。私の助けなどいらないな」
 グレンは息を切らしながらウィンターを見た。すると、ウィンターがにやりと笑いながら言った。
「強い。人間とは思えない」
 どきっとした胸をグレンが押さえる。表情がこわばっている。
 そう。ヴァンパイアに吸血されたあの日から、急に。

次回更新予定日:2015/08/08

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