ヴィリジアン 第1章 ムーンホルン(3) 忍者ブログ
オリジナルファンタジー小説『ヴィリジアン』を連載しています。
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ノックをすると、エストルがわざわざ迎えてくれた。
「入れ」
「失礼します」
 グレンが部屋に入ると、エストルはすぐにドアを閉めいた。
「執務室で話を聞いても良かったのだが、お前もここの方が気が楽だろう」
「確かに」
「私もお前に敬語で話されると何だか落ち着かない」
 グレンとエストルは士官学校の同期で、その頃からの友人だ。今はエストルの方が位が上のため、人前では敬語を使って話しているが、二人だけのときは昔と同じ口調だ。
「何か飲むか?」
「そうだな。コーヒーがいい。何だか気分が晴れないんだ」
「ヴァンパイア討伐から帰ってきたお前はいつもそうだ。だがな、グレン」
 エストルはコーヒーを淹れながら言った。
「陛下の前ではあまり態度に出さない方がいい」
「分かってる。でも」
「お前の身のためだ」
「でも、君だって言っていたじゃないか。陛下のご様子がおかしいって」
 エストルは口をつぐんだ。

 まだ士官学校に入って間もない頃だった。
「どうしたんだ、エストル?」
「いや、気のせいだ。気にしないでくれ」
「何だよ、エストル。話せよ」
「聞いて、くれるのか?」
「当たり前だろ」
 エストルはそれでも少し話すのをためらった。そして、ようやく重い口を開いた。
「殿下のご様子が……おかしいんだ」
「え?」
 エストルは代々宰相を始めとする要職に就いていた名門の出だったので、幼い頃から当時の王太子つまり現国王セレストの遊び友達だった。
「飛んでいた蝶を素手で捕まえて……」
 グレンは息を呑んだ。
「握り潰されたんだ。狂ったように……笑いながら……」
「そんなばかな」

次回更新予定日:2015/05/16

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